ロームシアター京都の5周年を記念し、VRのように360°見渡すことができる3Dモデルデータとして劇場建築を記録しました。そのデータ内にタグをつけ、そのタグの場所で実際に撮影されたダンス映像をリンクさせています。ロームシアター京都のイベントカレンダーで用いているカバー写真と同様に、劇場で過ごす人々の様々な姿を収録し、ロームシアター京都に実際に訪れたような体験を提案します。
3D Viewing監修/制作 ARCHI HATCH
振付:康本雅子
音楽:オオルタイチ
出演:康本雅子、佐藤健大郎、佐藤まどか、佐藤つきひ、澤野晴人、山城光
スタイリング:藤谷香子
映像監督・撮影・編集:山城大督(Twelve. Inc)
撮影アシスタント:神谷拓範
主催:文化庁、公益社団法人日本芸能実演家団体協議会、ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)、京都市
文化庁令和2年度戦略的芸術文化創造推進事業「JAPAN LIVE YELL project」
ロームシアター京都は、文化芸術の創造・発信拠点として、文化芸術都市・京都の名を高め、京都のまち全体の発展に寄与することを目指しています。舞台芸術公演が行われるホール以外に、賑わいを創出する新しい施設を備えることで、これまでにない開かれた場が生まれ、「劇場のある空間」を中心として、人々の暮らしの感覚と芸術とが相互に繋がり、京都に新しい「劇場文化」を形づくります。
“時代ごとの新しい価値を、これまで築いてきた古い価値の上に重ねていく” という、リニューアルオープンに向けた想いは、建物の価値継承にとどまらず、ロームシアター京都で行われる事業においても同様です。
それは、伝統の継承と新たな創造を続ける文化芸術都市・京都のまちづくりの理念にもつながるものと言えるでしょう。
ロームシアター京都では、そうした考えに基づいて京都に新しい「劇場文化」を形づくるため、「創造」「育成」「交流」「生活」の4つの要素を事業の柱とします。
それぞれが独立して行われるものではなく、各要素が循環して発展していく、有機的なサイクルを生み出していきます。
この度、ロームシアター京都において、「ハラスメント防止ガイドライン ~ロームシアター京都に集う全ての人のために~」を策定しましたので、お知らせします。
このガイドラインは、「ロームシアター京都館長問題に係る信頼回復の取組(令和2年12月)」の一つとして掲げ、検討を進めてまいりました。
策定にあたっては、複数の舞台芸術関係者からヒアリングを行い、案を取りまとめて、令和3年2月にシンポジウム「劇場におけるハラスメントを考える(個人が尊重され、豊かな対話が生まれるために)」において公表し、広く意見を募集したところ、多くの方が関心を寄せ、お送りくださいました。その後、文化芸術団体、弁護士、ハラスメント対策の専門家にもご意見をいただき、それらを踏まえ検討を重ね、京都市の確認を経て、ガイドラインとして取りまとめました。
ハラスメントの概念やそれに基づく動態は、今後の社会状況によって変化していく可能性があります。そのため、このガイドラインは、その都度、施設利用者、舞台関係者等の方々からのご意見をお聴きし、その機会をとらえて常に見直し、必要な改訂を行っていきます。
なお、ロームシアター京都は、舞台芸術公演に限らず、集会や大会、講演会等、さまざまな催しが開催される施設であり、本ガイドラインでは、例示として舞台芸術公演を取り上げていますが、その他の場合においても同様に運用していきます。
また、私たちは、今後ロームシアター京都が身体的・精神的に安心安全な劇場であり、「憩いの場」として機能していくため、職員研修といった館独自の学びの場を設けるだけでなく、京都の創作・上演環境の向上を目指す人々とも共に考える場を催すなど、ハラスメントの起こらない環境づくりに努めてまいります。
1960年4月29日、全国に先駆けた多目的な公立文化ホールとして、京都・岡崎の地に京都会館は誕生しました。当時の京都市は、財政的に非常に厳しい状況にありましたが、市民会館建設に対する市民の強い要望もあり、市民や企業からの多額の寄付金を財源の一部として建設が実現しました。
設計を担ったのは、日本を代表する建築家である故前川國男氏です。同氏は、京都会館を京都市民の、あるいは京都の青少年の一つの「生活道場」として活用していくという、当時の市長をはじめとした京都市の熱意に打たれたと述べておられます。こうして出来上がった京都会館は、岡崎地域の周辺環境との調和を考慮し、水平線を強く意識した意匠で設計されており、日本建築学会賞を受賞するなど、「モダニズム建築の傑作」として高い評価を受けています。
画像提供:永石写真事務所
京都府内唯一の2,000人規模のホールとして、開館からこれまでの間、コンサートを中心に講演会や映画の上映会などの開催を通じて、多くの市民が来場し、市民が気軽に文化芸術に触れることのできる文化施設の中心的存在として活用されてきました。まさに、京都の舞台芸術を中心とした多彩な文化活動が繰り広げられる「文化の殿堂」として、市民だけでなく、全国の著名なアーティストからも親しまれてきました。
開館から50年あまり経ち、施設全般の老朽化やホール機能の前近代化など、利用者や来場者のニーズに応えられない状況となってきました。こうした事態に直面し、京都市では10年間近くにわたり京都会館の再整備に向けた検討を重ね、2011年6月に「京都会館再整備基本計画」を策定しました。
同計画の中では、既存の建物を出来る限り活かし、市民の思い出とともに未来へ引き継ぐことを基本としたうえで、施設水準の向上のために必要となる再整備を行うことを目的とした、次の基本方針を示しています。
既存の建物価値を継承し、公共ホールとして建物を再生する。
「文化の殿堂」として多様な利用ニーズに応えるよう機能向上を図る。
岡崎地域の活性化や魅力の保全・創出を牽引する機能導入や環境整備を進める。
(写真左)画像提供:永石写真事務所
(写真右)京都会館の天井意匠 画像提供:永石写真事務所
再整備を行うに当たっては、現在の岡崎地域の風致・景観の向上に寄与するとともに、日本を代表するモダニズム建築として評価の高い京都会館の建物価値を検証し、実施する基本設計に反映するため、京都会館の建物価値継承に係る検討委員会を設置しました。基本設計は、現在の日本を代表する建築家の一人である香山壽夫氏が行いました。同氏は、基本設計に込めた思いとして「優れた保存再生とは、単に老朽化した部分を補修することではなく、時代ごとの新しい価値を古い価値の上に重ねてくことでなくてはならない」と述べておられます。
2012年6月に、基本計画に基づき、同委員会からの提言を踏まえた、「京都会館再整備基本設計」を取りまとめました。
PHOTO:小川重雄
京都市の厳しい財政状況の中で再整備後の事業展開を見据えた場合、京都会館を再び「文化の殿堂」として甦らせるためには、民間活力を導入する等により、長期にわたるご支援をいただくことが必要不可欠でした。再整備事業の取組を進めるなか、京都に本社を持つローム株式会社にご協力いただけることとなり、2011年9月に「京都会館の命名権に関する契約」を締結し、この命名権対価を利用して再整備を進めることとなりました。これまで50年間にわたり「文化の殿堂」 として親しまれてきた「京都会館」は、2016年1月10日に「ロームシアター京都」として生まれ変わりました。
京都市は、京都会館再整備事業を進めるなか、全国において幅広い音楽文化支援活動に取り組まれており、芸術文化の振興にご理解のあるローム株式会社に、50年間にわたるネーミングライツという全国でも例を見ない形で、京都会館再整備事業にご協力いただけることとなりました。
「京都会館の命名権に関する契約」に基づき命名された、「ロームシアター京都」には、” 世界文化都市・京都から発信する「文化の殿堂」として、音楽、演劇、伝統芸能等、様々な分野の舞台芸術が披露される劇場であるように” とのローム株式会社の思いが込められています。
京都に本拠を置く総合半導体メーカーであるローム株式会社は、永年にわたり音楽芸術を支援してまいりました。
50年間、市民に愛されてきた「京都会館」の再整備にあたり、その新しいコンセプトに共感し、今後50年間のネーミングライツの形でお手伝いさせていただくことになりました。
世界水準の文化発信拠点として誕生する「ロームシアター京都」が、日本を代表する文化の殿堂として、広く愛されることを願っています。
1960年 | 4月 | 京都会館開館 |
2005年 | 7月 | 第1回京都会館再整備検討委員会(~2006年) |
2011年 | 6月 | 京都会館再整備基本計画策定 |
9月 | ローム株式会社と京都会館の命名権に関する契約を締結 | |
10月 | 京都会館の建物価値継承に係る検討委員会(~2012年3月) | |
2012年 | 6月 | 京都会館再整備工事基本設計発表 |
2013年 | 7月 | ネーミングライツ名称「ロームシアター京都」発表 |
9月 | 再整備工事着工 | |
2015年 | 8月 | 竣工 |
2016年 | 1月 | 開館 |
ロームシアター京都は国内外の大規模公演が可能な約2000席のメインホール、舞台と客席の距離が近く一体感が得られる約700席のサウスホール、小劇場やリハーサル室としての利用に適した200人規模のノースホールを備えた多目的ホールです。また、ブック&カフェ、レストランを備えるパークプラザ、野外スペースとして活用できるローム・スクエアなど、多彩な文化活動を幅広く支え、すべての人に憩いの場を提供するための多様なニーズに対応できるこれまでにない公立文化施設です。
敷地面積 | 13,671.50 m2 |
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構造 | 鉄筋コンクリート造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造 他 |
階数 | 地上6階、地下2階建て |
建築面積 | 8,067.84 m2 |
延べ面積 | 21,049.18 m2 |
施工期間 | 2013年9月~2015年8月 |
基本設計者・ 監修者 |
(有)香山壽夫建築研究所 香山壽夫 |
施工者 | 大林・藤井・岡野・きんでん・東洋熱工業特定建設工事共同企業体 |
2020年からの新型コロナ禍の中、ある国の政府文化関係者が「文化芸術は必要不可欠であるだけではなく、生命の維持のために必要である」という趣旨のことを言われています。
この言葉は、「文化芸術は、人々がいきいきと心豊かに暮らしていくために必要だ」等のこれまでよく言われてきたことだけではなく、ストレートに「生きていくために必要」という考え方を示しています。
私たちロームシアター京都では、「文化芸術は人が生きるために必要」との思いを共有し、厳しい状況“であっても”文化芸術を支え続けるホールでなければならない、さらには、厳しい状況“だからこそ”、多くの方々に生きる力を届ける文化芸術の創造・発信に一層努力しなければならない、と考えています。
1960年開館の京都会館は、ローム株式会社様からネーミングライツ契約を通じての多大なご支援を得て、ロームシアター京都としてリニューアルオープンし、5周年を迎えました。この5年の間に培い、重ねてきた様々な取組みやつながりを生かしながら、当館が今、そしてこれから、できること、していくべきことをしっかり考え、実現していきたいと思います。
多くの皆様にご協力いただきながら、希望をもって、前向きに、スタッフ一同、精一杯努めてまいります。
ロームシアター京都 館長
山中 博昭