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#演劇#レパートリーの創造#2022年度

レパートリーの創造 松田正隆 海辺の町 二部作 「文化センターの危機」〈新作〉/ 「シーサイドタウン」〈再演〉

稽古場記録 (第一期:2022年8月20日〜9月2日)

記録:福井裕孝
2023.1.15 UP

ロームシアター京都の「レパートリーの創造」では、創作過程をいかに記録するかというアーカイヴの視点を持ちながら作品製作に取り組んでおり、作品ごとに異なる方法で記録を残しています。
2020年度のレパートリー作品『シーサイドタウン』(作・演出:松田正隆)の創作過程では、演出家・映像作家の村川拓也ディレクションによる稽古場記録映像を制作し、2021年6月5日に開催した「『シーサイドタウン』を振り返る」で上映を行いました。
松田正隆による「海辺の町 二部作」として『シーサイドタウン』の再演と新作『文化センターの危機』の上演を行う2022年度は、両作品で演出助手を務める演出家の福井裕孝が、自身の視点も織り交ぜながら、稽古場での日々の記録を書き留めていきます。


ロームシアター京都 レパートリーの創造
松田正隆 海辺の町 二部作
『文化センターの危機』『シーサイドタウン』

作・演出|松田正隆
出演|生実慧、鈴鹿通儀、大門果央、田辺泰信、中川友香、深澤しほ、横田僚平
照明|藤原康弘、杉本奈月(N₂/青年団)
音響|合田洋祐(ロームシアター京都)
演出助手・稽古場記録|福井裕孝
舞台監督|川村剛史(ロームシアター京都)
制作|齋藤啓・木原里佳(以上、ロームシアター京都)

【配役】
『文化センターの危機』
吉村 まりあ(文化センター職員) 中川友香
辻井 ひかり(文化センター職員) 深澤しほ
里岡 泉(高校生)        大門果央
中野 浩介(文化センター職員)  鈴鹿通儀
加藤 保(その東京の友人)    田辺泰信
杉田 進次郎(万引きする男)   横田僚平
神長 哲也(美術教師)      生実慧

『シーサイドタウン』
シンジ(帰郷した男)      横田僚平
トノヤマ(地元の男)      生実慧
ギイチ(隣の男)        鈴鹿通儀
クルミ(隣の女)        深澤しほ
ウミ(隣の娘)         大門果央
ケンイチ(シンジの兄)     田辺泰信
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福井裕孝
1996年京都生まれ。演出家。2017年にマレビトの会『福島を上演する』に演出部として参加。2018年から個人名義での作品の発表を始める。近作に『インテリア』(2020)、『デスクトップ・シアター』(2021)、『シアターマテリアル』(2020,2022)など。下北ウェーブ2019選出。ロームシアター京都×京都芸術センターU35創造支援プログラム“KIPPU”選出。2022年度よりTHEATRE E9 KYOTOアソシエイトアーティスト。
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【第一期稽古期間:2022年8月20日~9月2日】
8月20日(土)~23日(火)
8月25日(木)
8月26日(金)
8月28日(日)
8月29日(月)
8月31日(水)
9月1日(木)
9月2日(金)


 

8月20日(土)〜23日(火)

ミーティング

『文化センターの危機』稽古初日。制作の齋藤さんからいくつか事務的な話があったあと、この期間の稽古の進め方について確認した。『文化センターの危機』の台本を①〜⑧までに分けて、今日はそのうち①と②をやる。松田さんが作った稽古のスケジュール表を見ると、3日後の8月23日には最後の⑧まで稽古を終えて「通し」をする予定になっている。

この通り。

 

①コンビニ
登場人物の里岡や杉田のほか、店にいる数人の客も舞台上に実際に登場させるとのことで、「役」にはない客1~客4までがその場でほかの俳優に振られた。俳優は「役」として名前が与えられている登場人物のほか、戯曲の世界を生きる名もなき人々(モブキャラ)も演じることになる。

「動きと配置稽古」とあるように、まずは戯曲をもとに動きの順序と空間の配置を決めていく。客はそれぞれどのタイミングでやってきて、いつ会計を済ませ、店をあとにするのか。コンビニの入り口、レジ、商品棚、雑誌コーナーなど、コンビニの空間を構成する諸要素がどこにあって、劇場空間とどのように対応しているのか。演技の調子については特に触れられることなく、ただざっくりとした「動き」と「配置」だけ、運動が起こる始点と終点、空間の幅と奥行きが決まっていく。冒頭のコンビニの場面から⑧の最後までこの作業を淡々と続けていった。
23日、予定通り「動きと配置稽古」を最後まで終えたので「通し」をした。「言うても90分ぐらいちゃうかな」と松田さんは言ってたけど、ランタイムは110分ぐらいだった。

 

 

8月25日(木)

今日から稽古中に交わされるやり取りを可能な限りその場で書き起こしていこうと思います。
一昨日の通しは①~⑧をただ繋げただけだったので、複数の場面を併置したりシーンの繋ぎ目をシームレスに均すなどして全体を連続させていく。結果尺も短くなるでしょう。という方針でもう一度①から順にやっていく。

 

①コンビニ

──里岡、帰り支度をして自宅に帰る場面。
下手奥からわざわざ上手を迂回して帰っていたが短縮したい。
「お先に失礼します」というセリフで、そのまま前に進んだら帰り道ということにする。
上手に設定されていた里岡の家も下手にあることになる。

戯曲上では里岡の後ろにいる(不在の)妹の存在がそのまま下手の壁の向こうへと追いやられ、劇世界の部屋のカーテンと劇場の下手袖のカーテンが偶然同期した。

里岡の自宅、杉田がいる港、神長の自宅、三つの場面を併置する。

ある場面が去って空間がまた一つに再統合されると、今ここの状況がクリアに際立って見える。というのがあります。

 

②吉村家、辻井家、文化センター

──吉村、杉田と別れて自転車で立ち去る場面。
松田 (吉村の自転車)そこも早くしようかな、走るスピード。

吉村、早く立ち去る。

松田 ああ、そうそうそう。

──吉村、辻井がそれぞれの自宅から出勤する場面。
自転車(吉村)、自動車(辻井)を運転している二人が正面を向いて並んでいる。

松田 (辻井の)「いってきます」で車に乗ってるときには、吉村はもう自転車に乗ってそこにいて、なんか、並走、両方見えるようにしたいな。実際並走はしてないですけど。
松田 「いってきます」でそうなるじゃない。もうそれで(吉村)入ろうよ。

出ハケを中心に「移動」を省略していく作業が続く。

松田 ハケるタイミングは?
深澤 二人揃って、10秒たったらハケます。
松田 ここ、ハケなくてもいいと思っていて。
松田 一回裏回ってたでしょ、それやめたくて。
松田 ここに自転車停めてほしいな。ここ(上手)駐輪場、ここ(下手)駐車場で。
松田 そうそうそう。で(停めたら)、おはようございまーす。

以前までなかった文化センターの駐輪場と駐車場が見えるようになった。
車を止めたらそのままシームレスに出社します。

 

③文化センター・中庭

──中野と加藤が来て、ベンチに座っていた吉村が向き直る場面。
松田 なんか自分の頭の中でやってる(動いている)イメージで移ってみて。

──辻井と吉村が去り、入れ替わりで中野と加藤がやってくる場面。
松田 えーっとですね。(中野らの)入りを先にしましょう。ああそうだったかな、で、何秒で、ここも秒ですか?
深澤 5です。
松田 5で入ってもらえますか。
鈴鹿 言い終わり5秒ですか?
松田 セリフ終わりで入ってきてみて。それで探ってみます。

 

③文化センター・大ホール

──中野が加藤に大ホールの説明をする場面。
中野「客席が向こーうに…」
松田 向こーうにとか(ちょっと)。向こうに、で。

客席がある空間の広がりを想像すると「向こーうに」になっちゃう。
なっちゃわないようにする。

──加藤、大ホールの中の写真を撮る。
加藤「写真、撮ってもいいのかな」
松田 写真(スマホ)をどこに入れてるんですかね。ポケット? 背広着てたよね。どこに入れてるもんですか? かばん? かばんないよね。尻になると、尻のポケットに(マジで)入れてんじゃないかってなる。ここ(尻)から浮かせる感じだと大丈夫。

 

③文化センター・中ホール

──職員たちが行き交う中、中野と加藤が中ホールの見学に向かう場面。
松田 (職員役の)横田さんが(舞台の)中盤ぐらいまできたら、もう2人入ってるって感じで。

中野と加藤が名もなき職員(モブ)とすれ違うことにする。

──中野と加藤が中庭で話す場面。

二人が向かい合って話す場面は、必ず身体の向きをズラして正対しないように配置される。そのズレを補正しようとするはたらきからか、かえって正面性が強調される感じがする。

 

④学校

──中野と加藤が話している場面から、里岡の学校の場面へ。
松田 (中野の)「キャンプ行きましょうよ」から(里岡は)5秒で入ってきて、放課後というか、をやってください。
松田 入りを、次の人の入りを先行させていきますね。

松田さんから間として指示されるのは大体「5秒」か「10秒」か「良きとき」。

 

④コンビニ

──学校からコンビニへ。
松田 杉田が入ってきたら(神長は)奥にハケましょう。押し出される感じで。

俳優が去るのと同時にその場に立ち現れた空間も引き摺られて退場する。
潮の満ち引きの様に見えない空間の動きがある。

松田 で、帰り道となります。

 

──休憩します。

──休憩明け。

 

⑤キャンプ場・車内

松田 じゃあ行きましょうか。車の。中野の入りってどうしてるかな。
鈴鹿 今までは2人(横田さんと大門さん)がハケるとの入れ替わりで、こうなります(車のマイム)。
松田 これ(入り)何でとってる?
田辺 いやなんとなくで。
松田 曖昧だったよね。横田さんと入れ替わりでいいんじゃないかな。
松田 吉村、全体的にもうちょっと弾んでいいかな、キャンプウキウキみたいな。

 

⑤スーパー

──車を降りて。
中野「シチューとかどうですか」
吉村「あー。いいですねー」

松田 で、そこをもう直で(スーパーに)行きます。

前は少し移動していたけど車を降りたら即スーパーということにします。
キャンプの三人組以外はスーパーの客をやります。

松田 そこからうーんて感じなんだけど。(車のドア)バンって閉めたら(一人目のスーパーの客として)横田くん入ってきて、もうここから入って。
横田 前僕三番目とかだったんですけど。
松田 いいですいいです。(大門さんは)横田さん入ったら入ってきてくれる?
大門 はい。
松田 横田さん入るのと同時に入ります。降りるところからやってみてください。

三人組、キャンプの食材は一つひとつ声に出して確かめながら手に取っていく。
三人の間で共有できるレベルの声量でいい。

以前まで配置されていたレジの店員がいなくなって風通しがよくなった。
買い物から店を出るまでの道筋がよく見えるようになった。

 

──休憩します。

──休憩明け。

 

──もう一度スーパーから。

吉村の「何作るんですか」でスーパーの人は一斉に入ることにする。

松田 スーパーの背景を作るというか。

──レジの列を整理したい。
松田 横田さんがもうここにいるときに、3人は中央(のレジ列)からもうアプローチしてもらえると。
松田 ライン誰がどうなってるんだっけ。

 

⑥キャンプ場

──パンを切る中野。
松田 なんか長いパンで。なんかこう切るよね。長くてギザギザの。
松田 終始パンは切っててください。
松田 (切るの)早いのいいよね。

パンの不在が強調されるマイム。そこに「ある」行為がよく見えるマイムと、そこに「ない」人や物のイメージを喚起するマイムとがある。

──岩を登る加藤。
松田 最後手とかも使っていいですよ。

 

通します。

通し

──辻井の家、文化センターの中庭。

朝も昼もパンを食っている辻井。
パンとコーヒーはマイムとの相性が良いのかもしれない。
杉田もパン食ってた。

──中野が加藤とセンター内を回り、職員とすれ違う場面。

戯曲に描かれていない役名のない人物と交差する場面(瞬間)。
主要なキャラクターとその世界を生きる名もなき市民は相互にリアリティーを補完し合う関係にある。

──キャンプ、車を運転する中野。

ドライバーの視線がある。車内を車内たらしめ、車外を車外たらしめる張り詰めた視線。

以前に比べて一々の演技や振る舞いに対する疑いのようなものは無くなってる気がするけど、舞台上から視覚的に得られるイメージが鮮明になったわけではない。俳優の持つ想像が豊かになったというより、単に反復によって動作が定着しただけだと思う。でもそれでいいのだと思う。

お疲れ様です。

 

ミーティング

──松田さんより。
大きな流れの運動はできてきているから。単に身体を動かせばいいだけではなく、そこに何かがあることの確信を強くして、太々しくいることを目指したいです。

松田 冒頭のコンビニはもう少し精度を上げたいです。まだざっくりしているので。人数を減らして、密度を下げるとか。順序や滞在時間はうまくいっているが。

松田 食材を車に積み込むところ、より激しく(バタバタ)して良いのでは。
松田 空間が決まってきているから、より大胆にアプローチしてほしい。西洋的にというか、丁寧にしない、無造作にしたい。
松田 根拠はないんだけど、バタバタしたいなって。

『シーサイドタウン』でシンジとケンイチが寝る支度をする場面もバタバタしている。
漂白された空間に埃が立つ感じがする。

松田 大門さん、最初から手を前にやると店員に見えちゃう。

なのでそう見えちゃわないようにする。
マイムは何かに見える/見えないではなく、見えちゃう/見えちゃわないで考えた方がいい?
ユーモアの有無がポイントな気がする。

松田 中川さん、出力がもう少しはっきりしてくるといいかなって思ったな。最初のところの「え」も、もう少し強く言ったほうがいいのかなと思った。ただ大きくすればいいってわけではないんだけど。深澤さんと話すところもかな。
松田 微妙に恐る恐るみたいなところがあって、ドライブで3人で乗ってて、山に行くスーパーの前とか。気まずさっていうのは大事だから、でも気まずさがありながらも社交的に喋んなきゃいけないっていう感じとか。単純に俳優として確定していないことへの自覚も新鮮でいいんだけど、これ何回も繰り返し繰り返しやるから。
松田 気まずさを掴みながらリラックスして太々しくいることが重要だから。何の頼りもないところにマイムをしながら自分のイメージというか戯曲の世界を立ち上げていくっていう。

横田 発話について。セリフはその場所に行けば発話するってことになってて。何かに言わされてる、劇場? に言わされてるっていうネガティブな感じがある。
松田 語ってるのは誰か問題だよね。それはみんなで共有する問いだと思いますけどね。
横田 どっちかというと身体は俳優の自発的な動きによって展開するけど、言葉は違う。言葉はどこから出てきてるのかわからない。よくわかんない何かが喋っている。発話は事後的になる?
松田 演技として発話するときに、現在との整合性をどう取るかってことだよね。
松田 (キャラクター造形は)だんだんわかってくるじゃない。加藤なら東京から来た人とか。神長とかは最後までわからないかもしれないけど。

松田 俳優がずっとこうやって動いて、何の手がかりもないけど、とにかく彼らはどこかの場所にいるつもりみたいっていう。観客がそれを見て、でも理解には至らないってことが、新たな経験にならないかな。多少のドラマ性もありつつ。それが美学的に面白いっていう次元にいきたいし、すでにいってると思う。
松田 でもドラマも駆動してかないといけないから、キャラクターもないといけない。
松田 そのせめぎ合いについては、演出家としてああしてこうしてとは言えないし、役になるとか役から降りるとか、完全にコントロールできるものでもないと思う。

「点」で時間と空間を決めていくと自然と「線」になって、やがて「面」に発展していく。松田さんが言ってたように「線」や「面」の質に関わる部分はきっと俳優の仕事の領域で、演出にできることはあくまで場面に始点と終点を打つことまでなのだと思う。

松田 役のオンとオフってどうしてるんですか?

深澤 割と私はずっとオンかもしれないです。でも、裏行ったときにハーって息できる感覚はある。舞台上での緊張感はずっと持続していて、それがパッとオフになるっていう時間は無くて。
深澤 …話ズレちゃうんですけど、『シーサイドタウン』の時から指針にしてることがあって。Perfumeのワンルームディスコの歌詞の中に「引っ越してきて、これからの生活慣れるかなみたいな、目を閉じたままシャワー出せないけどそのうち慣れるでしょ」っていう歌詞があるんですね。
松田さんの作品を通して舞台上にいるときに「自分の身体はいま、舞台上にある」という感覚を忘れてはいけないと思うんです。この作品であれば、ノースホールという場所を無視はできない。身振りや導線の演出があって、自分の中で戯曲の中にある場面を想像しても、その想像した場面での振る舞いが舞台上に乗るわけではないと思うんですね。
深澤 いま稽古期間に京都に滞在して、自分の本来の住処とは違う場所に来てる。自分の慣れ親しんだ場所から離れてホテルで生活を始めないといけない。このときの自分の身体、ホテルでどのように過ごすのかを考えることは、自分が舞台上で創作する時の態度を見つめ直すことだなと思ったんです。ホテルの部屋を自分の部屋のように瞬時に使いこなしたり、普段の自分の部屋を扱うよりももっと派手に使う人もいるかもしれない。でもそういう態度ではいけないと思ったんです。借り住まいであることの自覚や手つきを手放してはいけないなと。
もうひとつは、ホテルでは洗濯機とかキッチンの位置などの距離感に慣れてない。右を向けば電子レンジまで最短で行けるのにいつもの癖で左向いちゃう、とか、その感覚が稽古の始めの感覚と同じだなっていう。それがすごく面白いんです。作品内でも、ホテルでも、24時間生活の稽古をしているみたいな。
その慣れない状態でも生活は続いていく。2週間滞在して、ホテルの生活にも作品の演出にも身体が馴染んでくる。新しいことを獲得していくことは重要だけど、でも慣れすぎてくると傍若無人な滞在者になってしまうから、舞台上での態度として横田さんの言ってたような感覚は忘れないでおきたい。
だからわざわざ京都に来て稽古をしてっていうことが、松田さんの作品の創作をする中で、私にとってはすごく意味のあることだなと思っています。

松田 太々しさと戸惑い? その矛盾や葛藤を抱えたまま演技を成り立たせてほしい。お互いに配慮しすぎて、戸惑いを見せられてるってなっても芝居としては違うっていうか。

太々しさと戸惑いを両立させる。舞台(人前)に立つことの太々しさを認めるところから感覚を始めるとついエクスキューズを多用しがちになるけど、そればかりになってもしょうがない。

大門 動きとか台詞とかは覚えられた。『シーサイドタウン』で他の人のジェスチャーを見てると「もの」がよく見えるなって思った。自分はまだぼんやりしてるからそこまでいってない。
松田 そこめちゃくちゃ頑張る必要はないですけどね。里岡の妹まで見えるようになるとかね。

中川 まだ分解できてなくて。身体の前面と後面の両方を意識できてない。後はまだ言葉の表面だけを追って、その凹凸を反映させようと言っているだけの感じ。セリフにはすでにドラマが書き込まれてると思うけど、それを表象したい訳ではないから。上演する上で戯曲の言葉からドラマ性? をまだ引き剥がせていない。

鈴鹿 戯曲には書いてないけど、その内実(行動原理?)を俳優が埋めるとか。そういうことが今はまだよくわかっていない。横田さんと同じように、どこから何を喋っているのかは確かにわからない。鈴鹿でも中野でもない。

 

 

8月26日(金)

午前中に広報用の写真撮影をしました。

昨日の続きから。
⑤の後半〜⑧ をやる。

松田 (13時)10分からやります。

 

⑤キャンプ場

──加藤、中野からビールを受け取るマイム。
中野がビールを差し出す動きが死角で見えない。

松田 それもう無理だから。(加藤)先にいっても大丈夫ですよ。あんまり気にしないで。「飲みます?」って言われたら(手を)出せばいいです。

──シチューが完成したことを外の三人に伝えるためバンガローを出る吉村。
吉村「そっちで食べますか〜」

松田 そこ、ちょっと小走りになろうかな。
松田 走ったらどんな感じになるかな。

吉村、走る。

松田 もっと歩幅大きくなるとどうなるかな。

吉村、そうする。

中川 (笑)
松田 いや、いい感じだけどね。それのあいだぐらいだけどね。
松田 もうちょっとタンタンタンって、タンタンタンタンタンにならない感じが、ちょっと長いかな。
前まで出てこなくても大丈夫って感じかな。

足音のリズムがある。
最終的にはタンタンタンタンになった。

──シチューを食い、みんな、なんというわけもなくうれしい、笑う。という場面。
中野「どうです」
加藤「え、あ、おいしい」
みんな「でへへへへへ」

松田 もう少し「あはは」って。
松田 「あははあはは」って何回か言ってもいいし。

──もう一度やる。

中野「どうです」
加藤「え、あ、おいしい」
みんな「あはは、あはは」

「あはは、あはは」

松田 もうあはは抜きにして。もう言わなくてよくて。おいしいね、おいしいおいしい。
でまあ、なんか和やかになる、気が抜ける感じってどんなふうにするかな。
深澤 身振りですか?
中川 顔を見合わせるとか。
松田 そうかな。幸福なんです私たちっていうサインを送り合うというか。

 

⑤キャンプ場・焚き火

──中野、薪をとってくる場面。

移動について。美的にどうにか解決するというよりは、あるべき移動を(省略せずに)そのまま見せるということなのかもしれない。あるべきというか、あってもしょうがないと思える移動。しょうがない移動こそ時間も距離もたっぷりフル尺でお送りする。薪を取りにいく中野の背中にしょうがなさが現れていて良い。

しょうがなくない移動とは。

松田 そこ小走りじゃない方がいいよ。

中野の火の付け方をもっと抽象化したい。
火をつける手の向き、視線の高さ、姿勢を決めて、火がつくまでその体勢を維持することに。

火をつけるマイムはかなり具象っぽく映る。
身体→腕→手→指と末端に向かうほど細かくなるので当然なのかもしれない。
見たくもないライターが見えてしまいそうになる。

松田 (息を吹く)フーが、そんな音しなくていいんだけど。聞こえなくて大丈夫です。

──薪に火がつく。

松田 深澤さんところに煙が行くみたいな。オホッオホッ。
辻井「オホッオホッ」

──ラジオから音楽が流れ、みな踊る。
辻井の話しはじめから次第に踊りをやめていく。

松田 辻井が止まったところから、加藤の踊りがはじまるでいいですか?

 

──休憩します。

──休憩明け。

 

もう一度やる。

辻井の話しはじめから(ラジオの)音楽を実際に入れてみる。

スピーカー一式を用意した。

 


⑥コンビニ

──杉田、万引きする場面。
松田 そうっすね。位置、前の位置と今の中央の位置の間ぐらいにしようか。なんとなく。
松田 万引きの仕方。なんかもうちょっと、大胆に?
松田 周りも少し見て、うん。
松田 こうよりも、こう。
松田 なんかまあだんだん洗練していくと。

──万引きを目撃した里岡。
里岡「店長、店長」
松田 そこ、最大限に声が出ない?

──杉田がバックヤードで店長に問いただされる場面。
松田 ここだけ椅子使ってみようかな。
松田 ここ(下手)一つ置いときますんで、自分で取って座って。

『シーサイドタウン』も含めて椅子は初登場。

杉田、取って、座る。

松田 そうね。

舞台中央で直立する里岡との対比。
立つ里岡、座る杉田、横になるキャンプの4人組。
徐々に地面と接する身体の面積が増えていく。

人は座ったら立ち上がらないといけない。
演技をやめてフラットな状態に戻ること以上の「恥ずかしさ」がある気がする。

椅子を出したり片付けたりする動作自体は気にならない。
これこそ太々しく自作自演で良いのだと思う。

──キャンプ場、4人が川の字に並んで寝ている場面。

視点が90度転倒しただけで依然として立ったままなのかもしれない。
そういうネタの漫才があったけど忘れた。
あった→ https://youtu.be/PLSUnNZXcZ0

人は寝たら起き上がらないといけない。
椅子から立ち上がるのに比べると気にならない。

──港にいる杉田と里岡。
里岡「働いてください」
走り去る里岡。

その場で走っているてい。
その後里岡の家の場面へと続く。

人は走り出したら立ち止まらないといけない。
もっといえば、ここでは走り出した時にはすでに立ち止まっていないといけないというか。
かなり高度な処理が求められていると思う。

 

──休憩します。

──休憩明け。

 

もう一度港の場面をやります。
里岡の位置を上手にします。

里岡、走り出して、止まる。
松田 その止まるのは。じゃあスッと歩いてみようか。

スッ

松田 うん。で、対面しなくていいよ。で、セリフになったらだんだんこっち見てくれる?
松田 「働いてください」で、そのまま(ハケずに里岡は)家に。で、家に着くぐらいで(杉田)ハケましょうか。

──里岡、帰宅。
里岡「さっきさ〜」
松田 オッケー。一回勉強してて、やめて、そのまま振り向いて。体は勉強机にいったままで、それでしゃべってみてくれる?

細かく決める。

後半はテーブル向いたまま。左手だけテーブルに添える。
途中から勉強を再開する。

松田 最後は、5秒でこっち(上)へ。

──もう一度やります。

ここも同様に音楽をかけてみる。
里岡が勉強を始めたらかけることにします。

 

⑦キャンプ場

──加藤が光を目撃する場面。
松田 入れ替わりにしますんで、大門さんが動いたら(加藤)入ってきてください。
松田 タバコ吸ってるんだっけ、それをもうちょい後ろにします。そうですね。そこに。
松田 タバコ吸ってて、こう(覗くように)見るっていうの無しで。いきなり(光で)ああってなった方がいい。

──吉村が来た。
吉村「吉村です」

吉村か、となる。腑に落ちる。

──加藤・吉村、発光する場所を見つめる場面。

2人とも「あれ」が最後まで何も指し示していないのが良いと思う。
ただ虚空を見つめる視線。距離はなく方向だけがある。

松田 (吉村の)「どうして黙ってるんですか」もうちょっと大きく。問い詰めるように。

吉村「どうして黙ってるんですか」

──入れ替わるようにして、辻井と中野が現れる。

上下からそれぞれ現れてまた同じように寝る。
そのためのストローク。滑走路のようです。

──吉村、懐中電灯を加藤に向ける場面。
吉村、実際に後ろを振り返らないで前方に加藤を想定して懐中電灯を向けることに。

吉村「〜傷つけられました」
走り出す吉村。

松田 えっと、こう来て、中川さんこの場で走れない? で、だんだん前に。
松田 「傷つけられました」で、中川さんがこう来て、こう走って、息が荒くなる感じ。
松田 もうちょっと(前)来てもいい。
松田 で、その間に、2人(辻井と中野)は入ってきて。

松田 なんか大胆に見えたまま作業してもらってかまわないので。
松田 位置的に照明は暗くなってるっていうか、切れてるかもしれないですけど。

できる限りハケないようにする。
舞台上(見える場所)にとどまって連続させていく。

 

⑧キャンプ場・朝

──帰り支度の場面。
松田 動きスピーディにならないかな。ガチッガチッって、あの作業のところね。ちょっと(段取り)確認して。
松田 なんかもう訓練のように。決まっているみたいな。

 

⑧神長の家

人は朝コーヒーを飲む。
味はなく温度と重さだけがある。

──神長、里岡から届いたLINEを読む場面。
松田 もう少し大きく読もうか。

最後までやったので、休憩して、通しをします。

 

──休憩します。

松田 ああ。頭が回らない。
齋藤 昆虫また食べたんですか。
松田 いや食べてないですけど、集中が。

大門さんが差し入れた昆虫食を知らずにスナック菓子と勘違いして食べて気分が悪いそうです。

──休憩明け。

 

通し

お疲れ様です。

ミーティング

松田 加藤さん、シチューの蓋開けてフリーズするけど、ちょっとかき混ぜる。ずっとしなくて良いから、そのへん任せますが。

松田 中野さん、辻井の告発があってから、その雰囲気の情動を説明しているきらいがあるので、そこをもう少し平板に。

松田 音楽のタイミングも考えたい。ボリュームはあった方がいいです。

松田 あとはまあ、吉村の走り込みは、まだこれからだと思うんだけど、芝居的にも難しいんですけど、あそこの運動をどう収めていくか。感情的な表出のさせ方としてはうまくいってるような気がするんだけど。

松田 全体の動きの流れとしてはうまくいってると思うんですけど。登場人物が(一々ハケて)消えたままになっていたところをつなげて、時間を持続させていく。
松田 (キャンプの場面で)寝て起きてってわざわざやってるのはやった方がいいなって。シーンとしては切れるんだけど。

松田 昆虫を食ってから悪寒がします。

深澤 句読点の位置とか今は忠実にやってる節もあるんですけど、想定する発話のリズムみたいなものが、戯曲書いてる時に埋め込まれてるんですか?
松田 戯曲書いてる時のリズムはあると思いますけど、ここに入ったらここのリズムになっていいと思いますんで。無視しろとは思わないですけど。塩梅はあります。

お疲れ様でした。
明日はオフです。

 

  

8月28日(日)

生実さんが発熱のため大事をとってお休み。

松田 ざね(生実)さんできっかけとってる場面あるんですかね。

生実さんのセリフときっかけは外から言うことにします。

松田 最初に止め通しをやって、1時間ぐらい休憩とって、また。
松田 今のところ100分強あるんで、短くなりつつはあるけどって感じですかね。色々話したいんですけど稽古優先で、また余裕が出てきたらミーティングしましょう。

今日は中高生が見学に来ます。
二組来ます。

松田 (13時)15分からやります。

 

──13時15分です。

 

松田 止め止めでいきますね。良きときにどうぞ。

 

①コンビニ

里岡「いらっしゃいませ」
松田 もうちょっとボソボソでよくて最初。身振りも特になくていいです。
松田 声は入ってていいですけど。もっとボリューム小さく。

──里岡、客1が来て対応する。
タバコを取るために後ろを振り返る。

松田 そうだね。そこから芝居が入っていく感じで。

自然に定着してきた店員らしさを剥がしていく。

里岡、加藤のレジ対応が終わったら、セリフの「あ、はい」のタイミングでお先に失礼する。
深澤さん(客2)は見えないレジ打ちに向かってエアーで買い物することに。
深澤さんがレジで買い物している間、里岡はまだバックヤードにいる。

里岡「お先に失礼します」

コンビニでも音楽を入れてみる。
加藤が中央を通過したら入れる。
その後の神長の家でも入れる。

 

②吉村家

──出勤途中、杉田とすれ違う場面。

ここは現実とも変わらないリアルな間合いですれ違う。
他が歪んでいるので正常であるがゆえの緊張がある。

松田 ゴミの物色をやや中腰、もう少し高い。で手が、もう少し…。
横田 狭い?
松田 そうですね。なんか、床にいかないように。
松田 それで、最初の(吉村が鏡見るところ)もう少し屈んで。もう少し時間長くしてはっきりさせるというか。一個一個きっかり。そんなに急がなくてもいいから。最初なんで割と身振りをきっちり見せるところっていうか。

疎かにやるなりにメリハリはつける。身振りが場に定着するまで、状態から状況へ焦点が移行するまでは動きを持続させる。

 

②文化センター

──自転車を停めて、出社。
吉村「おはようございまーす」
松田 自転車停めるとき、スタンド蹴るの強くしてほしい。

ここもやはりメリハリ。

──職員、一斉にハケる場面。
松田 これ、えーっと。深澤さんで(タイミング)取ろうかな。
鈴鹿 (大門さんが)てけてけてけ、で消えたら10秒です。
松田 そこで(最後吉村が上手奥で)止まったら、すぐ動いたらいい。止まりました、1、2ぐらい。

 

③文化センター・昼

──中野、加藤が中庭に訪れる場面。
松田 2人(辻井、吉村)が手を下ろすのを、段階作って。
松田 加藤の「こんにちは、加藤といいます」で下ろしましょう。

案外こういうちょっとした身振りが細かく決められたりする。
なんでも良いけどなんでも良くはないというか。

 

③中ホール

──加藤、中ホールを訪れて。
加藤「やあー、いいんじゃないかな」
加藤、ホール内を自由に見て歩く。

自由演技のパートです。ドッグランのように開放的でパッと見晴らしが良くなる。

松田 その動きもなんか余裕が出たね。
田辺 だめですか? 余裕が出過ぎですか?
松田 なんかあっち行きこっち行きみたいな、噛み締めるようになってた。もうちょっと早めに。

──中野、センター内の説明を終えて。
中野「ざっとでしたけど、こんな感じですかね」

ええ。

松田 加藤、演技の内容はいいんですけど。とはいえ話半分度合いが激しくなってるかな。もうちょっと真剣に応対するというか。
松田 運動は持続しててほしい。今止まっちゃってたから。

中野が去った後もしばらく部屋に滞留することで空間が持続する。

 

──休憩します。

松田 (14時)30分からやります。

──休憩明け。

 

④コンビニ

美術教室からコンビニの間のどこでもない宙吊りとなった時間。
大門さんのニュートラルな立ち方がいいのだと思う。

 

⑤キャンプ

──加藤を車に乗せて。
中野「荷物ないんですか」

ええ。

──吉村も乗せて。

吉村の「裁量」で間合いが決定し、車内がギュッと圧縮された。
漫才のような様式的な平面性。

──加藤、名刺を手渡す場面。

(後部座席にいる吉村に)名刺を渡す演技を成立させつつ、一方で現実の不自然に屈折した構図に対しても正直でいないといけないのかもしれない。ここも太々しさと戸惑い。

──スーパーに着いて。
松田 (ドアを閉める音の)「バン」が大事。いちいちやることが大事。
松田 他の場面は突っ立ってんだけど、車に応対する人々の身振りは大事かなとも思うんで。バタバタして。

車内「あはは」の後にも音楽をかけます。

──山道のカーブを走る車内。
カーブに合わせて身体が左右に振れる。

これまでの抑制の効いた演技体がフリとして効いているので、いくらかコミカルな仕掛けには映ると思う。いわば移動シーン(場面転換)の演出なので、ご愛嬌といえばご愛嬌。

──シチューを作る吉村、パンを切る中野、立ち尽くしている加藤。
松田 まずね、ここの三角形になってるところで、吉村が、割とずっとこっち(下手)向いてるじゃないですか。いくつか背面にある調味料とか取って入れるっていう。3回ぐらい? 基本は向こう向いてていいんだけど。

──辻井と中野の会話。
松田 中野のセリフ、あんま世話っぽくならないように。
松田 (辻井も)「中野さん」を言うまでに溜めないように。もっとスッと立つとか。(セリフ間も)もうちょっと詰めていいんじゃないかな。

──4人、顔を見合わせる場面。

加藤がなんかまずいこと言ったみたいにも見えなくもない。

──ラジオを取りに行く辻井。

薪を取りに行くための移動はグッときたけど、ここのラジオを取りに行くための移動はグッとこない。なぜかはわからない。

──ラジオから音楽がかかり、辻井のセリフ。

音楽と上演とがどう対応しているのかまだよく掴めていない。ただ上演のテンポに比べて音楽のそれが少し早い気はする。音楽が重なったことで辻井のセリフも少し巻いたように思う。

辻井「私は、いま、ここにいますけどね」

ええ。

加藤「シチューおかわりどうですか」
松田 2人に取り入ろうという魂胆?で、もっと大きく言おうか。感情的にはならなくていいんだけど。

 

──休憩します。

松田 (15時)45分からやります。

──休憩明け。

 

⑥コンビニ

──杉田、万引きする場面。

松田 (万引きのところ、里岡)直で見ようかな、ちょっと直で見るバージョンで。
松田 (品出しの時にも)大門さんが一回杉田を見るっていう。

──杉田、椅子を取り出して座る。

松田 (里岡の)レジへの移動をもうちょっと後にしますね。
松田 前をこうして横切りますね。そこで(杉田が)うなだれてるんだけど、レジに行く道中そーっと見てくれる? 実際に見ちゃって。

松田 こうして、こう見て。これぐらい。

里岡の視線によってシーンが持続します。

 

⑥キャンプ

──横になって寝ている場面。
松田 ちょっと寝とってもらって。ここで(加藤が)動いたら杉田現れようかな。ダブらせる感じで。
田辺 僕が天井見て、5秒で動きます。
松田 それと入れ替わりで入ってみて。

──その後、里岡が来る。
松田 これで大門さんが入ってきたら(寝ている3人)ハケましょうか。

出ハケをところてん方式で重ねていく。

──寝ていた3人は立ち上がって普通にハケるのではなく、しばらく周辺をうろうろしてからぬるっとハケることに。

松田 吉村から動いて、辻井はそのまま動かないで、最後中野。(杉田、里岡は)芝居は続けてていいですよ。

里岡の「さっきさ、走って逃げてきた」から音楽をかけます。

松田 (里岡の)「働いてください」で、その場で走る感じで。
松田 それがもうちょい弱めで。うん。

それが終わったら家に着いたことになる。

松田 里岡の「トモちゃんトモちゃん」まで杉田はいましょう。
松田 里岡が走り始めたら横に少しずれて。また(海を)見ていてほしい。

 

⑦キャンプ場

──加藤が眩しい光を目撃する場面。

見えない光に対してリアクションするというよりただそのポーズになるという感じ。
でもそれでいいのだと思う。

──加藤、セリフ。
松田 ちょっとかっこいいんだけどな、もうちょっと声張るといいんだけどな。やわらかくジェントルにいくとそうなっちゃうから。
松田 いろんなニュアンスとか感情が入り込んじゃってる。

走り出す吉村。
ここもその場で走るてい。

見えない壁というか足枷が見えるような。戯曲の中では走っている(であろう)吉村を走れなくさせている現実の制約や都合の方が見えてしまうこと。

松田 あくびだけど、口だけでもいいよ。声はいらないかな。

鈴鹿さん、マスクをとって、そうする。

松田 そうそう。それの大きいやつかな。

加藤、戯曲に書かれているタバコを吸うシーンは端折って、寝床に着くことに。

 

⑧キャンプ場・朝

帰りの車内も音楽をかけます。
みんなが車に乗るよりも前に先行してかけます。

──ホテルから帰る加藤。
松田 (ホテルの)ドア開けて、もうすぐ(荷物)引き出して。
松田 うん。ドアの身振りもうなしで、こうやって引き出して。

 

⑧駅

──杉田、加藤からお金を無造作に受けとる。あっさりと。

杉田「ありがとうございます」で、よきときに音楽をかけてみます。

松田 OKです。ちょっとまだ曲はわかんない。

18時15分から通します。

 

──休憩します。

 

通し

俳優が現れて演技を始める瞬間、やめる瞬間の微妙な空気の変化。シーンの前後が重なって次々に連続していくとそれが見えにくくなる。

 

ミーティング

松田 深澤さん。最初コンビニのレジをエアーでやってるとこ、一言二言欲しいです。

沈黙よりも一言二言聞こえてくる程度の静寂の方が静か。

松田 杉田の2回目の万引きの後の動線を足踏み走りをするかも。明日試すんですが、いずれにしてもこの前(舞台・客席最前の間)を通ろうかなと。

里岡、吉村と同様に走っているていの演技にします。

松田 スーパーのワゴンの3人組なんとかしたいですね。細かな動きを作ってないのでフリーになってるけど。基本あれでいいんですが、持続力というか緊張感がいるかな。もうちょっとやりましょう。

松田 来年度から指定管理が始まるって中野が話し始めるタイミングだけど、今は吉村がクーラーボックスに行って戻るまでの間待ちになってるから、その吉村の動きの流れのなかで話しはじめた方がいい。
松田 運動がおさまってセリフ、おさまってセリフってならない、連動していく。
松田 最初は大きな運動で作ってきたから角があるわけですよね。今は角をとっていくような作業。滑らかに運動がずっと持続していく。場の力学を構築していく。これまでスタティックに作ってきたものを、動的に、それもダイナミックってわけではないけど、ミニマムに、行為を橋渡ししていく。

松田 音楽も有効な感じはするんだけどどうでしょうか。ここでかかるんかねみたいな場面がないから、そういう意味では面白くないんだけど。かといって無理してかけないでいいんだけど。
松田 短い曲だから、ちょっと間が空いて、また流れてもいいんじゃないかしら。

松田 徐々に上演が要請するところで演出したり俳優の動きを見たりしているけど、キャラクターというか戯曲から見るとおかしなことになってます、みたいなのはない?

横田 (万引き後)うなだれて店長に詰問されるっていうところは?
松田 今うなだれ方がざっくりだよね。もう少し色々できるかもね。ただディテールというか手数を詰め込んでも仕方ないから。

松田 やっぱり通してやらないと。部分で際立たせても難しくて。何回も通していきます。

松田 これから悪くなることがあるんでしょうかね。

松田 明日ざね(生実)さんはいないんだね。体力は温存しつつ抵抗力をつけつつ。
松田 カツオ人間。

カツオ人間(大門さんのクリアファイル)

齋藤 また開演時間を決めたいです。

 

  

8月29日(月)

松田 (今日も)同じですけど。
松田 18時ぐらいに西山さんっていう俳優さんが見学に来るかも。

マレビトの会に長く出演されている俳優の西山真来さん。
ちょうどこの時期京都に来られていたそうです。

松田 じゃあ(13時)5分から、また冒頭から順々に。

松田 どうぞ。

 

②文化センター

──吉村、駐輪する場面。
松田 そこっすね。そう来て、テッて止まらないで。
松田 もうちょっと角をとって、カクカクってならないかな。
中川 えっと。角を取る?
松田 いやまあ、タッてならない。(動くまでの)間が空かなかったら大丈夫かな。今ので良いですよ

 

③文化センター・中庭

──中野、加藤と共に去り、一人立ち止まる場面。
松田 えっと(加藤が通るの)そこ内側で。中野とぶつかる可能性あるんで。
松田 もっかい入ってくるところから行こうか。

交通整理です。

 

③文化センター・大ホール

──加藤の写真を撮る演技。
松田 へーで(スマホ)収めないで。写真見て。
松田 うん、で。マイムで(スマホ)消えれば良いです。

 

③文化センター・中ホール

──中野と加藤、舞台前方を横断して中ホールへ。
松田 そこ(階段?)上がってるんですか?
鈴鹿 軽上がりしてます。
田辺 鈴鹿くんが軽上がりしてるんで、合わせて僕も上がってました。
松田 いや(やんなくて)いいですよ。いや上がる?
田辺 僕はどっちでも。
松田 上がるなら明確に上がろうか。
松田 ここ台本どうなってたっけ?
松田 いや、言葉で言っとけば大丈夫なような気がするので。俳優の身体としては気にしないことにしましょうか。

上がらないことに。地続きで上階の中ホールに進みます。

 

③文化センター・リハーサル室

──リハーサル室の説明をする中野とそれを聞く加藤。
松田 なんかもうちょいだね。
田辺 もうちょい運動がいる? まだ迷いがある?
松田 鏡の前に立つ時に突っ立っちゃうんだよね。

もう一度やる。

松田 そこ(やっぱり動きが)止まるんだよね。止まりたい?
松田 何が目的かというとですね。今ピタッピタッてなるから、1人がピタッとしたら1人は動きたい。心理的な根拠はないんだけど、それまでは場面がずっと反復だったから、1人はズレて運動を持続させるっていうのをしたいんです。

説明をする中野がピタッと止まるので、加藤は動いていてほしい。

 

⑤キャンプ場へ向かう車内

──スーパーに到着。
松田 そこ駐車して(ドライバーの中野)一手間、二手間欲しいです。
鈴鹿 シフトレバーも触って良いですか。
松田 はい。

もう一度やる。

松田 ちょっと今度手数多かったかな。柔らかくして。

何をするでもなく何をしないでもない、ほどほどの身振りがほしい。

 

──休憩します。

──休憩明け。

 

⑤スーパー

──カートを持った三人、店内を見て回りながら食材を買う。
松田 そこ、中川さんが(中野の)左に来れないですかね。

カートを中心にした三人の位置関係。

松田 その棚への動きも手前(内側)にして。
鈴鹿 こっちには(棚が)ない?こっちにもある?
松田 あるある。

棚は俳優が歩く通路の両側にあることとします。

──加藤、棚の下の方からビールのケースを取ってカートの下に入れる。
松田 それ(やらなくて)いいですよ。
松田 その辺でビールとって、そのまま(上に)入れたていで。

ケースのビールは重いのでカートの下に入れるという判断。想像によって自然に動かされているようには見えたが、やはりマイムとしてのディテールが際立つということでNO。

スーパーでも音楽をかけてみます。
レジの声と重なるのでやっぱりかけません。
その後山道を走る車内では音楽をかけます。

音楽が止んだ後、車から降りてバンガローに向かう3人の足音がよく聴こえた。

──シチューを食う場面。
松田 吉村が来るのをみんな若干待ってるじゃない。先に食べ始めていいんじゃないかな。今揃いすぎだよね。

顔を見合わせる場面、やはり加藤が仲間はずれにされている感じがする。
加藤の隣にいる辻井が最初に内側(加藤の反対側)を向くから?

 

⑥コンビニ

──万引きの場面

店を出て走り出す杉田。

杉田、里岡「店長、店長」が終わるまで、その場で走ること(走っているてい)にする。

松田 外に出て走り出すやん。もうちょっと早い感じ、逃げる感じがほしいな。

走る演技をしてるっていうより、走る音を足音で再現してる感じがする。

松田 なんか詰問…(昨日最後に話してたやつ)。
横田 詰問ってどういう意味かなって。うなだれてから。
松田 うなづいてるみたいな?
横田 ああ。なんか座ってからパン出すまでの時間が詰問なのかなって。
松田 とにかく店長が警察に電話したっていう。で、ガッカリ。それぐらいで良いかな。
横田 一回目、二回目で、うなだれが、小、大、みたいな。
松田 うん、いいかな。

松田 これ(パン)を出すまでに納得するみたいな、そこに座ったらもう納得するみたいなことなんやと思う。
横田 この連行されてるっていうのは、どっか(店長に)掴まれてるってわけではないです? そんな感覚もあったり。ただトボトボと?
松田 掴まれてはいないかもね。

詰問されている様子を見ている里岡。

松田 大門さん(杉田がパン)出し終えるまで待ってて。

杉田がパンを出したらレジの仕事に戻ります。

──港の場面。
里岡、走る。
松田 走ったあと、3回か4回くらい、大きく息を吸って吐くみたいな。

 

⑦キャンプ場

──加藤、振り返ると吉村。
吉村「吉村です」
松田 はいはいはい。休みますね。

 

──休憩します。

──休憩明け。

 

──吉村、走り出す場面。
ここもその場で走る(走ってるてい)。

松田 いいんじゃないかな。割と(走るのは同じ位置で)キープして。いい感じでしたよ。
松田 その後の「大丈夫」のとこの発話が大きくなるといいかな。

──4人、キャンプで横になって寝る場面。
松田 加藤、足が。
加藤、足(つま先)を閉じる。

 

──休憩して、話します。

──休憩明け。

 

深澤 普通に立ち位置確認で気になってるところなんですけど、最後に車二台並んで下山するとき、一歩分ずつずれてて。
松田 ずれててもいいけどね。そんなシビアじゃなくても。確認しますか。

──確認した。

田辺 ありがとうございました。
鈴鹿 ありがとうございました。

松田 田辺さんちょっと、セリフで「え」とか「うん」とか多いから。それ整理してもらって。対話の中でも間が空いたりして、もう少し早く突っ込んでほしいなってとこ多くて。部分稽古してないから流しちゃってんだけど。もう一回確認しといて。
松田 トントントンっていっといた方が。最後の杉田とのやり取りは間合い取るじゃない。それまでに空いちゃうとっていう。
田辺 (セリフが)「え」やったかな、「ああ」やったかなとか。
松田 間違ったら間違ったでいいんだけど。都度確認して台本に戻ったほうがいいかな。

横田 最後の駅のシーン。何回かやってて、なんで間が空いてるのかわからなくなって。
松田 いきにくいよね。でも他人同士だから。あれぐらいぎこちなくていいんじゃない。

松田 テンポ感とか流れとか、僕としてはいいと思ってるんですけど。この芝居がなんなのかっていうのはわかんないですけどね。

横田 音楽がなってる時って何も考えなくていいんですか? ムードみたいな。
松田 ムードみたいになってる?
横田 ちょっとムードの目しちゃってるっていうか。うっとりしちゃった。ドキドキするんですよね。
中川 自分が出てる時にですか?
横田 そうですそうです。観てる時にムード〜とはならないですよ。

田辺 (山道を走る)車の時にかかってるから、あそこはやりやすくなったみたいなのはある。
深澤 私もキャンプの時ドキドキしてます。曲と戦ってる。不思議な感覚になりますよね。迫ってくるというか、音楽は動かそうとする力があるから。
松田 まあラジオなんだけどね、一応。でも、辻井劇中では音楽聴いて踊ってるから。
横田 戦ってる場合じゃない。

松田 『シーサイドタウン』でも(音)入れなあかんかな。
深澤 あの時は稽古で実験的にやりましたよね。みんなで歌うシーンで。

車内で歌っているゆらゆら帝国の曲をスピーカーから流してみた(フル尺)が結局採用されなかった。

松田 こっち(『文化センターの危機』)は行けそうな気するんだよね。
松田 BGMになるのは嫌なんだけど、BGMにはなってるよね。
深澤 かかっている曲が役に影響して何かが起こっているってことはないから、すごい絶妙なバランスで鳴ってますよね。
松田 まあドラマの中の一つの要素っていうか。

松田 ここ数日でやってきたことを振り返ってみて、俳優の皆さんから何かありますか。
横田 昨日の通しが好きでした。杉田は出番少ないですけど、出る時に「さあ出番だ」って感じが無くなってきて、ただ舞台上を移動してるって感じ。それが昨日の通しであった。それは健やかなことです。
横田 でも今日の稽古ではそういうことは全く浮かばなかった。昨日はストレッチが調子良いとか、そういうのでたまたまそう感じただけなのかも。自分の出番だと思って舞台に出ることが今日は多かったんで。
松田 俳優のオン・オフの話とも関わってるのかな。
横田 オンもオフもないみたいな状態。

──最後の神長の長セリフについて
車に乗っている4人は舞台の上下にそれぞれ避けている。

田辺 あそこで舞台の横に行ってるときどうしてる?
深澤 どうしようって感じ。ざね(生実)さんが喋ってるのを見ていていいのか。まだあの時間の空気感は解っていないです。
中川 私は好きなように見たいところを見ていて。こっち(下手)は布(カーテン)があるから安心感があるのかも。鏡の冷たさも感じつつ。お客さん入るとわかんないけど、今は平気だなって感じ。鈴鹿さんは?
鈴鹿 僕はぼーっとしてますね。前はざね(生実)さんぼーっと見てたし。今はセリフ入れてる福井くん見てたり。自分には嘘つかずにいます。

役を生きるとか模倣の精度を高めるってことは徹底的に放棄して、演技ではなく「てい」で見せていく。

 

──休憩して、通します。

 

通し

お疲れ様です。
94分です。

 

ミーティング

松田 (キャンプの場面で)吉村が「大丈夫」って言って寝るじゃない。辻井もその後ついて行って寝るんだけど、すぐに寝る感じじゃなくしたい。
深澤 吉村を見て、という感じですかね。
松田 そうかな。すぐには寝ないだろうっていう。それちょっと稽古でやってみたい。

松田 加藤、タバコ吸ってるとこ、なんかカッコよかったんだけど。
田辺 なんか、わかんないです(泣)
松田 いや、わかってるはずだな(笑)。あれは意識的な、誤魔化せないですよ。
松田 吉村とのところもギア入っちゃって。全体優しい感じになっちゃってる?
松田 情が入った間。
田辺 自分ではちょっと原因がわかってて。場のことを意識しすぎて今までのリズム崩れたなって。やったらブレーキがかからずにスーっていっちゃう危うさがあるから。
田辺 「ええ」とか「ああ」の間を一生懸命やろうっていうのはありました。やってて昨日の方がよかったなっていうのは自覚してるけど。
松田 例えば「あ〜〜〜」のとこ(光が消えていくのを見ている場面)とか、加藤が見えている情景を親切に伝えようとしてる。
松田 光が消えていく描写が発語で伝わる感じは僕は堪え難いんですね。でもずっとその火種はあったなって。
松田 先導役としてやってる感じなのかなって。もちろん観客はそれを見るわけですけど、今日はちょっと、おっ踏み込んだなって。
田辺 今日はちょっと反省が多かったです。
松田 でも単にフラットにするってのも違うから、難しいね。
田辺 深澤さんとかそういうのふーんって(簡単そうに?)できてはるけど、僕の場合デコボコの道を行ってる感じ。自覚はしてるから頑張ります。前向きです。

松田 全体芝居は良かったですけどね。昨日との違いはなんだろうなって。
深澤 個人的な違いはあります。昨日まで、辻井が浮いてるなって感じがしてて、1人だけ気持ち的にキャンプワクワクしてたり。でも私がちょっとテキストが持っている雰囲気を汲みすぎてるというか、それで周りと調和が取れてないんじゃないかなって。
それで通しの前の稽古の時間で確認したんですけど、割とみんな自分自身で立ってるというか、響いてくる声の性質がそのままだなって。私は辻井をやる時に朝だと眠そうかなとか、ランチの時は声明るいかなとか考えたりして、役になりきることはまずないけど、そのシーンの雰囲気をイメージしちゃう。もちろんみんなもイメージはしてるかもしれないですけど。
それで、単純な話、声をめちゃくちゃフラットにしたら調和が取れるんだろうかって思って今回はやってみました。普段から自分の声の性質が「怒ってるの?」って言われるタイプだから、きついのかなって勝手に思って。地声で発話したらキャンプ楽しくないかな、みたいな。これはでも、周りからはどう聞こえてるんだろうなって、そういう迷いの中にいて、今日の通しの時は役がシーンでどういう雰囲気を持つだろうか、っていうのと自分自身のフラットな声の間をとってみた感じです。
深澤 雰囲気を立ち上げる作業ってどういうことなんだろう。それを俳優は担えるのかどうかっていうのが謎です。感情とかは手放したいけど、雰囲気は伝えたい。でもそれは私のエゴなのか…。
松田 芝居に失敗してたらダメなんだけど、観客の中にこれは何を見てるんだろうっていうのはどっかにないと。なんとなく雰囲気纏っちゃってたらそれはいらないんだけど。既存の雰囲気じゃなくて、その場で少ない身振りで、あとは突っ立ってるだけなのに、この場なりの何かができてくるならその方がいい」

松田 この作品が何だろうってことは何一つわかってないです。ダメなものにはならないようにしてますけど、良いものの価値基準はわからないから。

松田 真来さん、どうでしたか。
西山 ありがとうございました。面白くて、いろんなこと考えてたんですけど。役が内側にあるって人もいれば、外側のこの辺にある人もいれば、この辺にある人もいる。役との距離がそれぞれでいろんな重心があって、それがいちいち面白かったんですけど。最初、マレビトの会の演劇見るの久々で散漫な感じになってたんですけど、田辺さんの身体の語り口が物語を受け取りやすい構造で、その田辺さんの身体を通したことでいきなり見えやすくなった。解像度が変わった。なんかそれぞれの俳優のこれまで生きてきた感じも見えたりして、そこに好みがあったりするんですけど、このメンツでやるなら、みんなこっちの方向!ってならなくても、例えば感情的な見せ方だったりも共存できるんじゃないかって。いろんなベクトルがあり得る。

大門 セリフも動きもすぐ覚えられるようになって、緊張しなくなってきた。あとどうしたらいいか、色々言っていただけたら嬉しいです。

中川 これまで線っていうのが、俳優の動線としか思えてなかったけど、そこに質が伴ってきた感じがする。平行だけじゃなくて高さのこととか、描く線のバリエーションを色々考えるようになった。振動とかも。あとは、舞台上でやること、(松田さんから)言われることが増えていく方が集中できるんだなって。ただ立ってる時とかは不安なんですけど。内的な部分で細かくやることを増やしてやっていきたいと思います。

お疲れ様でした。
明日はオフです。

 

  

8月31日(水)

鈴鹿さんが別の現場に合流するため一足先に帰京。
生実さんは大事をとって滞在先よりオンライン参加。

お元気そうでした。

 

ミーティング

松田 一番最後の日に通そうかな。
松田 俳優の中で違和感とかあったら。通しもやらないんで焦らないで話しましょう。
松田 いくつかキーワードがあったと思うんだけど。感情の話とか。

田辺 話したくなったので話していいですか。昨日僕も僕なりに反芻してたんですけど。僕は世代が違うし、やってきたことも違うから。今はこんな時代なんだと改めて認識した。「え」とか「あ」を僕の詰め方だとうまく成立しないのはどうすればいいのかな。それが僕の課題。
松田 前半と後半の話の関係はどういうことですか。
田辺 今の若い人の間と僕の間は違うなって。
横田 端的にいうと早い?
田辺 僕らの時は相手のセリフ聞くか聞かんか、食い気味に入って喋る人多かった。それを僕も真似してるんかわからないけど。
田辺 横田くんとか大門さんとも違うし。
横田 他の人のそういう感覚がほしいんですか?

田辺 松田さんのいう奇妙さが欠落してた。それは何なのか。
松田 なんかキャラクターが表に出てきてる感じはしたな。それは田辺さんのキャラクターかな。こっちの解釈かもね。
田辺 声の感じはそのまま出してしまってた。戯曲の感じで体が硬くなる感じとかはなくリラックスしてた。でも何がそうさせてるのかなって。戯曲の緊張感を受け取ってどうやったらいいか。
松田 戯曲が持ってるのかどうかはわからないけど。エモーショナルなものになって上演が熱を帯びてくると観客が同化するんだよね。ただあまりにもスタティック(静的)になると。
田辺 タバコのシーンもそうで。空を見た時に同化するなーって感じがあったんです。今までは段取りで体が馴染まないままやってたのが。
松田 取り憑かれたんだよ。
深澤 劇場の霊に…!

田辺 僕は憑依とかないと思ってる。

深澤 加藤がタバコを吸うシーンを見ていて、タバコのマイムって指先の扱いによって吸い方のかっこよさとかあるし、かなり個性出るなって思いました。作品の中でそこまで気にするのかどうかは分からないですけど。
田辺 もっと機械的になっていかなあかんのかなって。
田辺 空に連れていかれるって感じ?
松田 それが憑依的なことなんじゃない。田辺さんの身体は今ここにありながらっていう。田辺さんでも加藤でもない誰かになればいいなと思う。
松田 真っ暗になったって時に怖くなるっていうのはそういうことで。
田辺 声も飛ばなくてもいいなって思ってる。身体がそうなってるんだったらそれに従って。声こもってるなって気づいてしまうと喉開こうかなってしてる自分がいたんですけど。そういうわけではないなって。
横田 それは気づいて(喉開こうって)実行するんですか?
田辺 やってる最中は修正効かへんから。昨日やってた時はこもってたから次はどうしようって考える。
田辺 横田くん、好きなバージョンの通しがあったって言ってたじゃない。こもる時と全然こもらへん時があるし。次はこもらんようにリラックスしてやってみようとか。
松田 俳優のコントロールがなくなって、受動的に流されていくというか。セリフの発話とか。それは良い演技だよね。
田辺 抑制外して。でも冷静さを失ってもいるから。切り替えはいるなって。

松田 5人は5人なりに何か課題見つけて、それを発表し合ってまたみんなで話し合ってって感じにしてみませんか。

横田 僕は、最初雑誌読んでて、海に行くとこ。海までの距離が今は変だなって、馴染まないなってなってるから。あと昨日家族で伊丹空港に行ったんですけど、自動扉があって開くまで待ってたんですけど、家族がそんな止まることないやろって。ここでは無対象のマイムでやってたからいちいち止まってたけど、有対象になると実際そんな人おらへんなって。

松田 5分くらい考えて。短いか。10分ぐらい?
中川 10分の方がいいです。
松田 じゃあ10分後、これやるって感じで発表してもらって。また時間とって稽古してって感じにしてみましょうか。

松田 生実さんも考えてそこでやってみる?
生実 (笑)

 

──10分考えます。

 

松田 はい、どんな感じですかね。どなたからでも。どこをやる宣言。

中川 あの。辻井と一緒にお弁当食べるところやりたくて。通しの映像途中までしか見れてないんですけど。最初の頃に松田さんからもっと出力が大きくてもいいって言われて、映像見たら実際声が小さいなって、深澤さんの声の響き方と全然違うって思って。それで声大きくしたんですけど、まだ差があって、その差が聞いてて良い感じしなかったので、他の人にも見てもらってどう聞こえるのかっていうのを言ってもらいたいなっていうのがあります。あとその場面会話が何気ないんですけど、情報量は多い気がして。これは明日やりたいんですけど、発光体を加藤と見るところ。見えないものについて話さないといけなくて、他のシーンでもずっと何も見えてないけど、見えないことが急に不安になる気がして。いつも迷いながらやってる。加藤との関係性なのか何をとっかかりにしたらいいのかわからないので、これは課題の設定がはっきりしていないんですけど、やりたいところです。

深澤 私も吉村とのお弁当のシーンやりたくて。あと辻井の朝の食卓のところ。というのは、私が劇中で会話するところって、ざっくりと3つのパターンがあると思っているんですね。
ひとつは辻井家の朝の食卓のシーン。通しの映像を見たときに、母が何を言っているのかってところまで見えなくて。母と会話してるけど、母はト書にしかいなくて、舞台上では架空の人と話してる。今日までの稽古では、全体の流れやマイムの確認しながらだったので、動きや身振りの正確性を気にして立っていたように思う。もう少し、朝の時間感覚とか、母との会話の感覚とかを頭の中で文字起こししたいっていうか。焦らずに舞台上に滞在したい。
ふたつめは吉村とのお弁当のシーン。吉村との距離感が図れていない気がするのでピントを合わせたい。戯曲上ではどちらのシーンも相手が隣にいる距離感覚なのに、ひとつめの朝の食卓のシーンは見えない相手と話すという状況で、ふたつめは実際に舞台上にいる人と話す状況がある。対話の相手が舞台上に実際に居ることと居ないことで、声が聞こえる・聞こえない、存在感を感じる・感じないの違いはあって、自分の身体が受ける影響についてもう少し自覚的になってみたい。
みっつめのパターンは、キャンプのシーンで中野に捲し立てるところで、モノローグの独特の時間が流れていてさっき挙げた2つとはまた質の違う発話。ただ、あのシーンはそこまでの流れがあってのセリフだから、抜粋してやると変な癖つきそうで逆にあまりやりたくないかもしれない。

田辺 コンビニのシーン。流れのままやってしまってるけど、それでいいのかなっていう疑問があるから。居方を色々試して変えてみたい。もう一つは、キャンプを全般的にやってみたい。稽古で身体に馴染んでるから。キャンプ場にいるていが、もう違和感なくいるみたいなことになってて。ほかのみんなは素直にキャンプ楽しむってなってていいんですけど、加藤はそうじゃないだろうなって。違和感持ったまま動いてないといけないというか。発光体のところもそう。何か見なくちゃいけないんじゃないかって。
松田 「海が見える」(ってセリフ)のところとかとは違うの?
田辺 全然違います。ビール取る時もビールなくても平気で取れるけど。あそこの光は実体が欲しくなるというか。

大門 私は帰り道歩いてて、杉田が向いたタイミングで家に着くんですけど、そこが合わないのでそこをやりたいです。

横田 僕はさっき言った。

最初から順にやります。

 

①コンビニ〜里岡の帰り道

やった。

大門 やっぱり(位置的に杉田が)見えないですね。
松田 ちょっともっかいやってみようか。

大門 これぐらいだったら見えます。
松田 演技としては(身体の向きが)正面の方がいいなと思うから、自分で家に着くタイミングを取っちゃっていいんじゃないかな。20秒とか。そんなシビアなきっかけじゃないんで。

松田 田辺さんは(コンビニの場面)どうだった?
田辺 心持ちを変えたら色々間違えました。
田辺 棚からこれ取ってこれ取ってって流れのままやってるから。さっき横田くんとしゃべってたんですけど、「(商品を)選ぶ」っていうのを身体の中に入れるみたいな?
松田 あれ感があるよね。わざわざ立ち上げ感があるんだよね。
田辺 だからやってみてよかったです。
松田 「選ぶ」を現在化するとリアルになるってだけで、本来やらないもんね。
田辺 例えばスイーツが好きな人なら、スイーツを前にして気持ちだけでも姿勢がわって前になるとか。身体はそうなってなくても。
田辺 そうなると舞台上でも待っていられる気はした。ただ機械的に動くんじゃなくて、ここでじっくり見ようとか。

松田 ウィーン(自動扉)はどうだったんですか。
横田 ただ時間を短く…。
松田 自動扉に忠実な人はあんまいないよね。
松田 海までの移動は?
横田 よくわかんなかったです。海を見るってこともよくわかんないので。
松田 サーチライトみたいにってことにしてるけど、もうちょっと色々ね。監視してる人の視線。今も成り立ってるんだけどね。
横田 奥を見よう、手前を見ようって。で、見ながら椅子が見えるなとか感じてたんですけど。今は目盛り、ノースホールのここまで行ったら折り返そうとか。それは海を見ようって想像することを放棄してる。

中川 お客さんいたら変わりそうって思ったんですけど。私がお客さんなら、こっちをいかにも見ている感じで見渡されると見ないでーってなるんですけど。他の作品を観てると、観客のわたしたちを見ているのではないと思う人と、すごい見てくるなーって人と両方いて、観客の顔がいっぱいあった時に横田さんはどう影響されたりされなかったりするのかなって思いました。
横田 今は西山さん松田さんとかいるなーって視線がジャンプするけど、本番だとジャンプはない気がします。人を選ぶ必要がないから。
松田 眼差しの話は、さっきの発光体も海も関わってくるし、正面性の問題でもあって。大門さんも観客を見てるわけですよね。コンビニであっち見て棚選んでる場合と最前線で海を見る場合と。第四の壁問題があるじゃない。焦点がロックされてはないけど俳優がこっち見てくんなって、岩松(了)さんの文章でもあったけど観客も見られてる。
横田 立ち読みの場面、本の内容を目では追わないけど、本をめくるときのディテールは細かくするみたいな?
横田 海って伝わった方がいいんですかね。
松田 僕伝わらないと思ってるんだけど。波止場にいるってわからないじゃないですか。でも俳優は海に来て波止場で監視してるていで。そのつもりでそこに立ってるってことの方が重要やと思ってるから。

深澤 今の話を聞いていて気になったのが、一昨日言った、前の通しの時はキャンプ楽しかったけど、今回の通しではつまんなかったっていう私の実感について。俳優の楽しいってなんだろうって。観客にとっているのかいらないのか。
海を見るつもりでいるってことだと、綺麗だなとか海を見ている時の気持ちが生まれる気がするんですけど、ここから5秒間で次に移動するって時には気持ちは生まれないじゃないですか。その俳優の「しているつもり」とか「景色を見ようとする姿勢」が有ることと無いことはどういうことなんだろうって。地平線見てる時は横田さんの中になんか生まれてますよね。
横田 水の揺れみたいなものは想起するし、それでゆっくりになるんかなって。
深澤 つもりでいることの動きは大事なんですかね。
中川 つもりでいる、から動く?
深澤 本当にクールに、首を右から左に5秒で動かすっていうことも出来るし、海を想起しながらの時間を舞台上で過ごすことも出来るじゃないですか。厳密な5秒とはならないかもしれないけど。どっちでいたらいいんだろうっていうか。
横田 後者の方が魅力的ですけどねー。
深澤 行きすぎると情動になるから、それならやらない方がいいのかなって。
松田 それがやりすぎて海を見てるってことが伝わることになる、その情動が生まれるとあれだから。観客にわかっちゃう。
松田 ていが上演を良くしてるのかどうかはわからないけど。俳優だけが喜んでればいいってことでもないんだけどさ。

横田 僕は7割は杉田だけど、3割ぐらいは自分で、目の前に椅子とか見えてて、そろそろ海見るのやめよっかな、みたいな感じ。
田辺 果てしなく海見るタイプと…。
横田 果てしなく海見るってミスチルみたいな(笑)
田辺 ふと我に返って見えてないよなって。
深澤 横田さんの感覚は分かる。そして役と自分どっちかに極端に寄ると崩れる感覚がある。

松田 車乗ってるていとか、立って勉強するとか。演劇学校では普通教えないでしょう。でもそれがていなんだけど。それを真剣にやってるんだけど、もっかい確認したほうがいいよね。
松田 車でこう曲がったら身体は本当にこうなる?とか。だけどここは床なんですからって。だったら極端にこうしようぜって方になる。

 

──休憩します。

──休憩明け。

 

②辻井家

──朝、家族といる場面。
中川 お母さんはどこにいると思ってるんですか。
深澤 始めは台所にいて。少ししたらテーブルに来る。リアルな気持ちとしては、お母さんが話している時間はお母さんの方に顔を向けたいんですけど、顔を正面に向けてテレビ見てるっていう演出があることで劇場に戻される感じがあって、そのバランスに助かってる。
横田 テレビ見てる人って印象は強い。
松田 テレビっていうのも戯曲読んでないとわからないと思う。
田辺 ずっと遠い距離で喋ってるのかなって感じはした。前向いてるから。背中越しに。

中川 おじいちゃんのことはどう思ってる?
深澤 勝手なおじいちゃん像ですけど…実際に認知症の祖母がいて、家でTVとか見てるとよくわからないところで笑ったりとか、本人は楽しんでそうだから割とそのまま、というか。その感じが理解できるから、おじいちゃんがしゃべらないこととかは心配してない。
松田 それはわかるな。もちろんそういうつもりで書いたけど。
深澤 前回の通しの映像を見て、ト書きのお母さんが起点になっている会話だと、観客に何の会話をしているかちゃんと伝わっているかな?って不安になった。自分が起点のセリフを発話する時は、シーンが伝わることの安心感があるけど。多分、今までは身振りや動きに集中してあまりにも母との会話に間が無さすぎたから、もう少し話している母の存在を感じたいなって。
田辺 ゆっくり滞在したいっていうのは見えた。ちょっとだけどっしりするみたいなのは出てた。聞いたから認識しただけかも。

松田 焦点化する所と疎かにするところ、それは自由に伸縮自在にできるわけじゃない。空間の方に俳優が当てはめていくってこともあるけど、そこからちょっとずつ解放されていくには、両方が相互作用を起こすというか、俳優が場所を立ち上げるし、一方で場所に振り付けられてもいるみたいな。
中川 ただ立ってるだけの時間、誰この人って思えて。それがいいなって思えた。
横田 出かける前の突っ立ってる時間。その前後はなんか考えてる? マイムの手つきとか。コーヒーを持った身振りのまま立っているのと何も持たずに直立しているのとでは「この人誰?」っていうことの感じ方が違うなって。助走があったから何もない時間が活きているなって。
深澤 コーヒーを持ったまま立っていると、劇の中にいる人として立っていられるんですけど、出かける前の突っ立っているあの時間は徐々に怖くなってきます。コーヒーを持つ身振りを解放して、7秒後に次の動作にいくっていう演出なんですけど、7秒が限界だなっていう感じがある。テレビを見ていたはずの景色がなくなっていくというか。もし10秒いたらノースホールの現実に引っ張られると思うから怖い。真っ白になりそう。
松田 最後の(加藤と杉田の)駅のところもそうよ。荷物持ってるとことか、お金のとことか。
松田 ポーズの運動で作ってるのかな。

 

③文化センター

──昼食の場面
中川 自分の声が客席に聞こえづらいのはよくないなって。
深澤 でも私は逆に、私の声が大きすぎるんじゃないかって。
横田 深澤さんは遠くにいるようにも聞こえてくる。声質の問題。違う声質がランチしてる。
横田 その人の声がそんな感じってことで聴いてましたけど。勝手なイメージでずれてるように聞こえてた。

違う声質がランチしてる。

松田 (中川さん)お弁当蔑ろに食べてるよね。
中川 食べる時に口を開けるか迷ってて、でも開けなくてもいいよなーて。
深澤 私は口開けちゃってるな、パン…。
松田 (里岡が)りんご食べる時は?
大門 開けてます。
横田 喋る演技が控えてるじゃないですか。僕もパンの時は喋らないんで、もぐもぐ咀嚼する。

松田 ざね(生実)さん、画餅(注)で寿司食べてセリフ飛んだんだよね。
生実 はい。味にびっくりした。でも鈴鹿さんいわく韓国の俳優とかは食べながら演じたいらしい。
中川 食べながらうまく話せる俳優は良い俳優とか言いますよね。

深澤 松田さん的にはどうなんですか? 身振りの演出としては。
松田 開けてもいいんじゃない?
横田 パンは口が開きやすい。
深澤 吉村はお弁当だから、箸を使ってお弁当から口まで手を運ぶストロークがあるけど、パンはちょっと首を動かすだけだからストロークがあまりない分、食べてるってことは分かりにくくなる気がする。
松田 もうちょっと動いていい気はする。蔑ろに食べてるからお弁当作るの失敗したんかなって(笑)
中川 お箸をイメージしながら動きはフォークにもなってる。難しい。

深澤 私の声量の話ですけど、舞台上では視線がずれてるから距離感がうまく掴めていない気がして声量も変になってしまう気がします。
松田 実際はベンチだよね。座ってやってみたら?

箱馬に座ってみる。

松田 そこまでしたら横意識して話したらいいから。上半身の制約が下半身と合ってないし。
中川 ていを保てないから。座ってるとパンを見せてくれてんのに見てることにならないんですよね。だからどうしようって。違和感。成り立たない。すごい無視してるみたいな。
田辺 座ってやると会話が噛み合うなって。親密さも見える。やってるていっていうのが緊張感を観客に与えて。

──なぜ杉田は座るのか?

松田 なんか感覚なんだけどね。
中川 杉田が自分で持ってきて座ると、床から浮いてる感じがします。切り離されちゃう。

中川 (通しを)映像で見て、パソコンとか自転車とか全体的に手の位置が高いかもって。それで途中で手の位置を直した。
松田 本来的なことをやってる気はするんだけど。ギリシャ悲劇とか模倣じゃなくてこういう最小限の身振りでやってたんじゃないかって。
田辺 『シーサイドタウン』で地図見るところ、手の位置もっと高くしてっていう根拠がわからなかったんですけど。今の見て、高くて正解やわって。
横田 ゴミ袋を持ち上げるところもそうですか?
松田 そうですね。それとか焚き火とか。それってダンスでもないんだけど。
田辺 ダンスまで行ってもダメだし。

そのままシームレスに休憩します。

 

──休憩明け。

 

田辺 なんか人のん見ときたいな。
松田 無責任な。
松田 冗談冗談。

松田 ちょっとソロ光をお願いします。

 

⑦キャンプ

──加藤、光を目撃する場面。
田辺 大門さんハケるとこだけお願いしていいですか。

手前の⑥の終わりからやる。

ソロ光。

深澤 シーンに入ってくる田辺さんとシーンから去る大門さんのモードが違う。田辺さんは入る時に、もうなんならタバコ持ってるみたいな。そこがもしフラットになったらまた変わるのかなとか考えながら見ました。
田辺 深澤さんがずっとオンっていってたから、僕もオンでやってみようって。
松田 加藤になったまま来てる。どっちでもいいんですけど。

田辺 光のところ、下半身は安定してるけど、心理的に上半身は定かじゃない。光は追わない。あっちの方向は見てるけど。
横田 移動にムードがある。影から現れた時に、そのムードが時間が立つにつれて不穏な感じに、僕はそう感じた。

──光りを目撃した時の身振りは?

田辺 この手もどっかで見た手だなって思ってやってます。
深澤 みんな並んでやるとどうなるんですかね。
中川 手が出るとか。

横田 暗いことが影響することはあるんですか?
田辺 暗さとかは思ってない。キャンプの火は感じてるかも。そこに誘われるような。
田辺 吉村さんが先に帰りますってなったら、暗さは意識するかも。
松田 大門さん屋根のところどうしてるの。

里岡が外に出て星空を眺める場面。

中川 大門さん自身の現実の経験?は引っ張り出したりしてますか?
大門 なんとなく見えてるつもりです。上向いて本当に星が見えてるような感じ。すっごい明るくなるっていう。おばあちゃんちから見える星空のイメージとか。

 

──休憩します。

──休憩明け。

 

──さっきのシーンから吉村が現れるところも続けて。

やった。

沈黙。

横田 すぐなんも言えないですって。え? どうでした!
大門 前から気になってたんですけど、同じもの見てるはずなのに目線が違うなって。中川さんは下見てて、田辺さんは上の方見てる。
松田 まあ合わせた方がいいかな。合わせない理由もないから。
松田 上ぐらいがいいかなって。(劇場の)ランプは? 本番は消えてるけど。客席で見えないか。
中川 全然光っているものとは違うけど、溶岩が急冷して固まるのをイメージしてた。あとはなぜか光っている色が反射材のようなイメージだった。蛍光っぽい?
田辺 「消えていきますね」のところは、ちょっと大き目の線香花火ってイメージ。
横田 僕も『シーサイド』のときは照明見てました。光ってるから。
中川 なんか見なきゃみたいな。目標物が一個に定まると会話が変になりそう。戯曲に書いてある「あれですかね」とか不思議に思ってます。
松田 2人が光を弄っているのに、観客も付き合っているみたいな。
深澤 このシーン見てていつも思うのは、発光物体を見て2人はどういう感情なのっていう。恐怖なのかワクワクなのかなんなのか。突っ立っているだけだから。その謎さが面白いと思いつつ、もう少し2人がどう思ってるのかが知りたくもなります。2人は発光物体に対してどう思っているんですか?
中川 虫みたい。光ったのを確認したいっていう。自分だったら暗いところ怖いから確認しに行かない。
田辺 近くに隕石落ちたって確信持てたら行くかも。そうじゃないなら明日の朝見に行こうみたいな。
松田 なんか水面下で話が進む(ドラマが表に現れてこない?)みたいなことは戯曲としてもあるんだけどね。
松田 この作業を通じて、線に質を伴わせる、豊かにしていくことでより太々しくいられる。とっかかりになるのではないかしら。

松田 明日も課題が見つかれば。足踏み(走ってるていのところ)とかさ。
横田 万引きとか。
松田 ざね(生実)さんは。
生実 神長の佇まい模索してて。考えないとなって思いました。

局面ごとに生じている問題については確かめつつも、演技のレベルではあまり足並みを揃えようとしなくていいと思う。西山さんも言ってたように各々の思い描く想像、その思い描き方を尊重する。

注:コントグループ「テニスコート」の神谷圭介氏が主催するソロプロジェクト。第一回公演に生実さんが出演していた。

 

  

9月1日(木)

松田 今日も。

松田 新たに出てきたところとかありますか?
中川 キャンプの時に辻井がラジオ取りに行ってる間、3人こうしてるんですけど(焚き火に向かって手を前にかざす身振り)、それに困ってて。辻井を待ってるのか、時間が止まっているのか。どっちとも言えない時間になってるならそれはそれで納得するんですけど。どう見えてるか。

松田 万引きからやってみようか。里岡の「すごいよ、トモちゃん」まで、ですね。とりあえず。そこ違ったっけ?
横田 万引き二つやりたいです。
松田 万引き二つをやりますか。じゃあ10分開始できるような感じで。

④、⑥万引きの場面

──最初の万引きから。

──続いて二回目の万引き。

やってみて。

深澤 横田さんの課題はなんだったんですか?
横田 万引きの手つきが美しいか否か。
深澤 ちょっと話ズレますけど、二回目の万引きの時、見ている側としては、店員の里岡と絶対目合ってるなって思うんですけど。それはバレてるっていう認識?
横田 バレてない方ですね。でも目が合わないようにしようって。でも映像見たら割と見てて。
田辺 里岡からの視線は感じてるもの?
横田 顔は見てないです。

松田 里岡が事務所に来た杉田を見てるのは、どういうことがあるんやろうね。見えてるのよね。
大門 見てるつもりでした。
松田 もっと感知しない方がいいのかね。
松田 里岡なのか、誰が見てるのかっていうのは面白いと思うけど。
松田 見ないで直でレジに行っても面白いと思うけど。

中川 椅子に座ってる杉田を見てる時の里岡が(杉田の)良心に見える。良心の天使に見守られてるみたいな。それから里岡が振り向いた後、店はそれでも回さないといけないから、この人は仕事をするっていう風に都合よく自分の中で良心の天使が終わって、見てた。
深澤 杉田が椅子を出すためのきっかけになってくれてるように思いました。里岡が見てくれてるおかげで圧があるというか、椅子をとる動機が見えるというか。座る理由がわかるなって感じ。
横田 椅子…なんでしょう。好きです。座れるの最高だな。本当ありがたい。みんな立ってるのに。
深澤 唯一座る人。床にも寝れないしな。

『シーサイドタウン』では全員ずっと立ってる。座ってる人も寝てる人も立ってる。
マレビトの会では、確か実際に座る場面でもパイプ椅子(劇場にある椅子)と箱馬の二種類があった。
座った時の高さとか姿勢とか、それ自体の持つ質感や量感。

小林「漫才師って立ち仕事の接客業やん?キッツイ仕事やん?」
小林「それに比べてコント師どもはさ、すぐなんか椅子持ってきて座るやろ?」
小林「しかもコントってさ、最悪コント『睡眠』って言ったら寝れんねんで」
友保「ウケへんけどな。ひとつもウケへんけどな」
小林「楽から生まれる笑いなんかないのに」
(金属バットの漫才より)

田辺 椅子を取るときの心理状況は?
横田 ないです。動機とかは別に気にしてなくて。でも大門さんにトボトボ歩いてる時見られてるなって感じてはいる。近くに立ってるなっていうのも。

松田 (杉田の)その場で走る演技はどうでしたか。
中川 ランニングみたいな走り方。あんまり頑張って見えない感じがずれになってて。そりゃ捕まるみたいな。横田さん的にはどれぐらいの?
横田 スピード出てんなってなってます。でも自分で出てると思ってスピード出てないこと多いんで。

松田 棚に補充するところもうちょっとゆっくりでもいいかもね。毎回思うけど。急いでんの?
大門 私がきっかけだから急がなきゃって。
松田 特に前半の身振りを丁寧にした方がいいかな。

横田 杉田が位置に着いたら来たなって感じで見てるんすか?
大門 そうですね。

横田 万引きの手つきは美しかったですか?どうしたら美しく…。
田辺 僕トボトボ好きですよ。トボトボ歩き美しいと思う。

中川 今日は(万引きする)パンが薄く感じたんですけど。厚みがない。昨日、松田さんに共有してもらったブレッソンの賽銭泥棒のがあまりにもそうだったから。変えて薄くなったんかなって。全体的にタイトになって。

ロベール・ブレッソンの映画『たぶん悪魔が』の賽銭箱からお金を盗み出す場面。

見てみます。

深澤 ちょっとやってもらっていいですか。

菓子パンを盗んでいるらしい。

田辺 (手が)お腹から浮いたらいいんじゃない?
横田 こう?
田辺 僕は好きよ。

美しさとは。

横田 でもすごいですね、ブレッソンの。みんなああいうのですか。
深澤 手がすごかった。
田辺 肘開いたらいいんじゃない。
横田 肘開くとやりやすいけど。万引きをしてますって肘が主張しちゃう。美しくない。
横田 幅を取るっていうのはいいですね。浮かすっていう。
松田 ポケットどういう構造になってる?
横田 ジャケットのポケットです。でもこれぐらいですよね。
横田 ああ肘開きますね。

実際にジャケットを着てみる。

横田 ああーこうだ!
松田 美しくなったね。それ初期にやったやつに近いね。

ポケットに入れて、平然と。コソコソしない。
そして走る。

松田 そこ美しくないけどね(笑)。早歩き。
深澤 恐竜みたい(笑)
横田 ここお笑いポイントやなと。
松田 ブレッソンの聖なる感じから一気に俗っぽくなるね。俗でいいと思うけど。
横田 もう(万引き)いいんじゃないですか、もうお腹いっぱい。

 

⑥キャンプ

──焚き火の場面
田辺 加藤が焚き火に手をやると仲間感でるなって。
田辺 あと辻井がラジオ取りに行くの待ってる間、気持ち的にはシチュー食べたいとかありますけど。
中川 ここ動いちゃいけないのかなと思って。
松田 動いていいと思います。もう少し人間味を出しても。場を持たせてるだけみたいにならない身振り。

待ってる人たちの待ち方がルーズになったことで、辻井のラジオを取りに行くための移動も見え方が変わった。

深澤 あと踊りってどう映ってるんだろうなって。気になってました。
横田 中野は気になってる。それぞれ違うのはいいんですけど、あそこまでいっていいんか。一番目に入ってくる。
深澤 本人のいないところで。
松田 ぐるっと回ってOKになってるけど。鈴鹿くんはどんなことしても目に入ってくるだろうから。居る時に言えばよかったんやけど。

直近の通しの映像を見る。

松田 むしろみんなもうちょい踊ってもいいんじゃない?
松田 顔見合わせるとか。

松田 ここ中野がいないけど、まあもう少し緩やかに動いてみようか。
松田 (14時)10分から。

 

──休憩します。

──休憩明け。

 

⑦キャンプ

──夜、加藤と吉村が歩く場面。
松田 マスク取ろうか。

やった。

深澤 ちょうどこの流れなので。前回の通しで、吉村がテントに寝に行ってから辻井がすぐ寝るのは違う気がするって言ってたので、確認したかったです。
松田 そこ(吉村の近くに)立ってるの良かったんで、立ってて、加藤がまた歩き出したら寝ることにしましょうか。

それぞれが動くタイミングを整理。
辻井が寝てから中野があくび、中野が寝たら辻井のセリフに。

──吉村、走ってテントに戻る場面。
吉村、走る。

松田 もうちょっと走ってた方がいいよ。
松田 2人(辻井と中野)を通すまで、それまで持続させて。

松田 うーん段取り感あるな。

松田 バタバタ感はなんかことが起こってんなってなっていいんだけど。裏事情が見える感じがする。松田 その辺は交通整理の問題だから。

中川 やっててわかんない。(前よりは)この方がいいなと思ったんですけど。逃げられないから。横田さんのところも同じ感じあるけど、あそこはランニングマシーンみたいでいいなって。

最初は一度ハケて客席の後ろの通路を迂回してもう一度出てきてた。
今は舞台上の見える場所で移動を完結させることに。

横田 ここ(その場で走る演技)は長い方がいいなって思ってて。何秒とかは決めてないけど、走りすぎかな、ぐらいやる。
松田 よく舞台で走ってるていってあるけど、あれを復活させる感じあるけどね(冗談です)。
横田 あの文化まだ死んでないです。

──大門さんはどうやって走っているのか。

──里岡が杉田にパンを手渡して一言告げた後走り去る場面。
里岡「働いてください」
里岡、走る。

田辺 足音は? もんちゃん(大門さん)足音鳴ってないなって。
深澤 腕をもうちょっと振った方が走ってるように見える?

中川 何を目指したらいいか。上手に走ることは多分できるけど。
松田 通しの中では成功してるなって。感情に任せてるけど、体は動かない、けど動かさないといけないみたいな。大門さんも横田さんもていとして成り立っているけど。
松田 ていっていうより、走れてないっていうこと?
中川 クイズの、紙破るやつに走っていく感じ。ちょっと落ちるイメージ? そこまでは決めてるんですけど、その先はいつもどうしようどうしようって感じ。
横田 走りから歩きに変わるってところが、ここで横向いた時にある印象ですけど、そこを歩いてみたらどうなんですかね。だんだん歩くっていうのは何か経過を見せてる感じがする。

田辺 足動かさないのは? 上半身だけ動かして。
松田 踊ってるみたい。

なんか違う。

田辺 足が動き始めると、情動も動き始めるというか。
松田 じゃあ横田くんのところもそうする?
横田 統一するっていう印象はなかったです、各々の感じがあるのかなって。
深澤 横田さんは万引きの時、割とちゃんと走ってましたよね。
田辺 杉田のは全然(気にならん)。

松田 うまいな。

結局立ち止まったまま、その場で走っているていでやってみることにします。

松田 おかしくなっても笑わないでやってみようか。

松田 もう一、二歩前に行った方が。
松田 タッタッタッタで、足揃えない方が。
松田 そこでフリーズにならない感じは、いいなって思ったけど。

深澤 肩で息するみたいなのはどうですか?

中川 右手前に来るようにしたいんですけど。
松田 あんまり合わせすぎると、ざっくりしてた方がいいよ。
松田 肩揺れてるのは良かったけど。
横田 上半身が走ってることを内包してるってこと。

──稽古を見に来られていた照明の藤原さんより。
藤原 走ってることの内実を考えた方がいいんですかね。ここ本当に走ってるんですかね。
松田 走ってることの内実ってなんですかね。
藤原 なんというか杉田が万引きして逃げるなら走ることはわかる。走るために走るわけではなくて目的か何かがあって走るわけで、その内的な状態が走ることにもあらわれる。そこではうまく走れるかどうかは必要ではないというか。今ここにいる中川さんが走る演技をするってことの居心地の悪さとかも松田さんの芝居の中では大事だと思うんですけど、一方で戯曲の内容的に走る中身っていうところも確認した方がいいのかな。今はどうすれば走っているように見えるかなっていう外側の話に終始してるから。
松田 演技として成立するかしないかは基準がわからないけど、舞台上で走るという演技に失敗してるってことが戯曲の内容ともリンクするというのもある?

 

──休憩します。

──休憩明け。

 

松田 あとなんかやるところ。
松田 キャンプ全般とか言ってたけど。
田辺 いや。やっぱり中野がいる時がいいと思います。

松田 戯曲の動詞をあげてみようか。

戯曲の中にある動詞を書き出してみる。

運転する(自転車/自動車)
飲む/食べる
歩く/走る/止まる
たたずむ
立つ/座る
買う/盗む(スーパー/コンビニ)
見る
聞く/聴く
踊る
寝る
火をつける
集める
当たる
むせる
持つ
置く
描く
書く
着替える
品出しする

松田 名詞と引っ付けて〇〇するってするとキリないね。
松田 いくつもある動きの中で気になることありますか。

大門 やりたいところ思い出したんですけど、品出しのスピードを遅くって言われたのをどれぐらい遅くやったら。
松田 やりましょうか。

後でやります。

松田 単独で抜き出せばあれだけど、常に流れの中で主体的に動いているわけでないから。
松田 その場から移動する動詞と、その場の細かい身振りで何をやっているかがわかる動きと、色々ある。

横田 「りんご」とか「火」とかを見てる方がより能動的に見るってことになるんですかね。「りんご」とか「火」とかって「コーヒー」とかとは少し違うっていうか。象徴的? 特に観客にとって。

松田 VRってあるじゃない。ゴーグルつけてこうやるじゃない。あれと我々がやってることは近いようで全然違う気もするんですけど。VRの人たちはそこにいるつもりでいるわけやん。でもVRをつけてる人を外から見てる人にとっては、この人はどこにいるのだろうってなる。

松田 それを徹底した公演(注)では、今までやった演劇を思い出してる人をそのまま提示したわけ。たまにちょっとその身振りもやってって言ったんだけど、全く動かないで思い出してる人もいたから、めっちゃ面白いっていう人と金返せって人といましたね。この演劇をやろうとした最初はそれだったんですよ。基本何も持たないっていうのはそこから始まったんです。ただ衣装だけは着てて、そっちの方が思い出しやすいですってことで。この時にこの時のことを思い出しますってことだけ決めていて、あとは藤原さんの照明だけがあって。
横田 思い出してる上演と、今みたいな上演で、その思い出してる中で走るとか。
松田 そうね。戯曲っていうのも思い出してるってことと同じじゃない。
横田 みんな思い出し合ってどうやって終わるんですか。思い出せなかった!とか。
松田 演出のしようがないですからね。瞑想に近いかもね。瞑想は無になっていくことだけど。
松田 その場合、運動というものが0になる。俳優は立ちながら思い出してるから、それを見て会話してんだろうなって思ったりしたけど。
横田 それは省略?
松田 省略というか何もないです。想起をする。夢の中で高いところから落ちてる時みたいな?
松田 そこまで行っちゃったんで、これからどうやって俳優の身振りを作っていったらいいんかなって。徹底的に運動に気をつけてきたこれまでを踏まえて再構築していかないといけない。
松田 来た観客を見る見ない問題もあって、僕は見ないでって言ってたんだけど、それは踏襲されて。思い出してる状態は観客とは別のところにいるから。ある意味観客とのやり取りによって共感が生まれるっていうのが舞台芸術なんだろうけど、見る見られる関係は保持したまま、それが違う関係、二項対立ではないものになっていくにはどうすればいいのかってことを模索しています。
松田 その想起するっていうところから、俳優の中で何か内実が満たされていれば、見れるものになるんじゃないかっていうのはある。
横田 それって、辻井の朝のシーンの出発前の5秒くらいの瞬間とか? 何もせず突っ立てる方が内実が満たされてる感じあるじゃないですか。マイムとかジェスチャーで時間を作らずに。
松田 観客がいる現在の方で運動が起こっているから、現在がパフォーマンスによって埋まっている。急に止まって時間がずいぶん経つと、おやおやってなってくる。物語の時間がはがれて剥き出しの何かが現れてくる。でもそもそもここはここでしかないでしょっていう。
横田 風景を見る人とか、想起してる状態に近いですよね。手元でマイムやってる人に比べて。それでも辻井の車を見ると現在のマイムになる。

松田 これはこれで置いといて。ちょっと里岡のところをやろう。品出しを。

 

④コンビニ

──品出しから万引きの場面まで。

やった。

松田 大丈夫かな。もっとゆっくりでもいいけど。自分としてはどうなんですか。
大門 いや、いつもは焦ってただけなんで、これでいいんだなって。

松田 何を品出ししてるんですか?
大門 ペットボトルとかお菓子とか、クッキーとか。

 

──休憩します。

──休憩明け。

 

松田 中野と加藤が来て、吉村が立ち上がって振り返るところあるじゃない。あそこ決めずにもっと楽に。
松田 マスゲームみたいになることがたまにあって。田辺さんも。キチッキチッてやらない。角をとっていきたいです。

松田 あとなんかありますか?
松田 戯曲のこととか。神長は誰だとか。

松田 ざね(生実)さん、なんかありますか?
生実 いや、特に…。

生実 (神長は)落ち着いてるんだろうなって。自分のひとりの時間を過ごしたいとか。コーヒーとか飲んで。思ってるんですけど。

松田 こんなところですかね。齋藤さんミーティングを。
齋藤 上演の開始時間を。

決めた。

松田 色々話しましたね。明日楽しみですね。どれだけ変わってるか。
田辺 中野さん。
松田 中野さん置いていかれたかもね。

松田 ざね(生実)さん、なんかありますか?
生実 明日って僕は?
松田 僕はこれ(画面)見ながら、神長の発話。
生実 発話は大丈夫です。
松田 ちょっとやっとこうか。

画面越しに参加するためのリハーサル。

注:http://www.marebito.org/antigone/

 

  

9月2日(金)

松田 ではもう早速やりますか。色々課題が出て、大きく変わることもないですけど。 
松田 齋藤さん何かありますか?最終日ですけど。
齋藤 私からは特に。忘れ物のないように…。
齋藤 衣裳は?
松田 私たちの間では共有できている。
深澤 いや、そうでもない…(笑)
松田 カラフルな感じがいいんだけどね。
田辺 色味とかイメージは?
松田 ないです。僕にはないけど。みんなパンツがいいんじゃないかって思ってんだけど。デザインが入っているっていうよりはシンプルなのがいいと思う。どうですか?
深澤 キャンプ行くし、寝るからスカートだとちょっと気にしちゃいますしね。
深澤 次回の12月の稽古前までにLINEでみんなが持っている服を共有できれば。持ってくる時に色味が被らないように。
松田 『シーサイド』も『文化センター』も同じ衣裳でやります。これはもうやりたくて。
松田 11月の『シーサイド』は前(初演)の服を再現して持ってくる必要もないです。

松田 一応(13時)15分からにしますか。

通し

お疲れ様です。
98分です。

ミーティング

松田 どうでしたか。まあまあよかった。
横田 いい感じでした。
松田 ちょっとずつみんな、楽に居れるようになったんじゃないですか。
松田 まあ、現実にいない2人(鈴鹿さんと生実さん)が、また加わるとどうなるかわかんないけど。

松田 走るのどうだったの? 中川さん。
中川 昨日やった、その場で動かないというのも踏まえて走ってみました。

松田 (田辺さん)セリフとかのミスが勿体無いよね。
松田 ちょっとずつ不安があるんですよね。田辺さん大丈夫かなっていう。今「あれ?」ってなってんのかなとか。

松田 あとは。

横田 2人もいないと見るのも難しい。ソロとしては見やすかった。関係性の中でこの人気まずそうだなとか、錯覚してたのかもしれないけど。風通しがいい感じはした。人がいない分。
横田 あの(辻井の)無対象のお母さんみたいに、無対象中野でも上演はできるなって。

鈴鹿さんが不在のため中野がいるていでキャンプの場面も通した。
キャンプの三人(四人)組。

横田 三人組好きなんですよ、僕が。単純に。
松田 ELTとかわかる?
大門 朝テレビでやってて、ちょうど聞きました。
松田 中川さん知ってるの?
中川 知ってます。
松田 ダチョウ倶楽部とか。

松田 心地よかったな、見てて。音楽どうかなって思ってたんだけど、まあいいかなって今日思った。

中川 ざね(生実)さん、なんか食べてる。
松田 ざねさんどうでしたか。
生実 (画面越しでも)見てて面白かったですけどね。
横田 こっちも面白かったです。声。

松田 まあハマれば面白いんやけどね。この芝居ね。
松田 3Dメガネみたいな、見えるようになるまで時間かかる感じ。絵が二重になってて、視線を操作することで浮かび上がってくる。そうなるまでは(時間)かかるやろうなって思ったね。だからある程度は付き合わないといけない。その塩梅をどれだけ観客に優しくするのか。でも優しさが3Dの装置自体をぶち壊すことにもなるので。

松田 というわけでした。なんかありますか。

横田 観客は何に出会うのか。観客はどういう状態になるのか。
松田 何に出会うか。
横田 今どこどこにいるなとか、コーヒーか紅茶か飲んでるのかなとか、キャンプに来たらしいけど何してるのかな、晩御飯かなとか。で、場所が見えたらそれは嬉しいことなのか。何を見て喜んだりするのだろうか。
松田 僕らは割と内容知ってるから、知らないまっさらな人が見ないといけない。そういう他者性があった方がいいなとは思ってるけど。
中川 よろこびかぁって。鉄骨があって、それを見たときに誰かが住んでその人たちも出ていって、家が朽ち果てるところまで想像できたらいいなって思って、でもやっぱり鉄骨しかないみたいなことが起きればいいって思ったんですけど、それってよろこびなのかって。
横田 場所を大事にしたいってことですかね。
中川 いる建物もここだし、俳優も観客も同じ建物にいるわけじゃないですか。ずっとここにいるけど、それぞれが違うところにいることになる。むしろ場所が一致しないことの方がよろこびっていうか。
中川 はっきりしてるのは、私の想像してる家が伝わって欲しいわけじゃないってことです。
松田 この人がキャンプしてんだなってわかることがよろこびではないんだろうね。そこから色々繋がっていく、その起点にはなるんだろうけど。観客はそういう流動的な状態に付き合って、そこでいちいちどういう解釈と認識が生まれてるのかわかんないけど、ひとまず付き合って終わるっていうことかな。
松田 そういうものを作る上での俳優の身体はできつつあるなっていうのはこの期間で感じた。ただ段取りでそこにいるんじゃないっていう。これからもっとそうなっていくだろうし。

松田 この俳優はどこにいるんだろう。でもどこかにいるような感じはするっていう。運転してる、勉強してるとか、コンビニにいた万引き犯が海にいるとか、映像表現のように見えるわけじゃないからね。でも俳優はその朽ち果てた鉄骨なのか骨組みだけはあってっていう感じはするけどね。

松田 身体の生々しさみたいなものは逆に感じる気がするけどね。身振りが全部疎かな感じなんで。汗まみれになれば生々しいかっていうとそうじゃないし、生々しいってわかんないけどね。

松田 それ(横田さんの靴)ペタペタいうね。
横田 うるさいですかね。みんなどんな裏側ですか?

靴の裏を紹介し合う時間。

横田 ああ、サンダル組は似てますね。スニーカー、コンバース。
深澤 これ(私のサンダル)結構うるさいなって思いました。裏固いから響く。
横田 こういうの(田辺さんの靴)がいいんだろうな。ランニングシューズ。

田辺さんの靴。緑のナイキの「速」。

田辺 ブツブツのやつはキュッキュ鳴る。
横田 わかります。これブツブツです。

松田 平田オリザの『幕が上がる』見た?
松田 幕が上がったらなんとかせなあかんみたいな、演劇ってそういうとこあるよね、みたいなことが主題なんだけど。唯一面白いなって思ったのが、劇の進行と関係ないところでノイジーな音が鳴っちゃって、劇が壊れて失敗したっていう。映画だからその音声が逆に強調されるようになってて、本当はそんな鳴ってないだろうけど。舞台セットを引きずるような音?

松田 冒頭しか覚えてない。飛ばして見たから。
横田 東出くん出てます?
松田 出てないと思う。違うやつちゃう?
横田 東出くんとももクロ共演してんのおもろそう。

──見ていた齋藤さんより。『シーサイドタウン』では寝るシーンは寝ているていで立ってたけど、今回は実際に横になっていることについての質問。

松田 キャンプ(のシーン)は地面で寝れるって気がしたんですけど。今はもう立って寝れないな。徹底的に抽象化しようっていうのが二年前はあったからだろうけど。
松田 立って寝た方がいいですか、齋藤さん?
田辺 カメラの位置が変わったんだよ。
松田 具体的に寝ても本当に睡眠をとってるわけじゃなくて、寝る真似をしてるだけっていう。

松田 河原で打ち上げしようと思ってんだけど。茶話会。
横田 デルタに行きたい。石を渡りたい。
松田 近くで売ってる豆餅が美味しい。
松田 サミットで豆餅見ても、京都で生まれた僕はって思うんですけど。
松田 京都で生まれてないんですけど。

松田 結論は出なかったですけど。じゃあキリがいいところで。
松田 長い旅でしたけどね。お疲れ様でした。
みなさん お疲れ様でした。

お疲れ様でした。

お疲れ様でした。

デルタにて茶話会。

  • 福井 裕孝
    福井 裕孝 Hirotaka Fukui

    1996年京都生まれ。演出家。2017年にマレビトの会『福島を上演する』に演出部として参加。2018年から個人名義での作品の発表を始める。近作に『インテリア』(2020)、『デスクトップ・シアター』(2021)、『シアターマテリアル』(2020,2022)など。下北ウェーブ2019選出。ロームシアター京都×京都芸術センターU35創造支援プログラム“KIPPU”選出。2022年度よりTHEATRE E9 KYOTOアソシエイトアーティスト。

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