京都が誇る若きバレエの伝道師
2019年12月の「くるみ割り人形」の王子役や、2021年7月の東京バレエ団 HOPE JAPAN 2021において「ボレロ」メロディ役でメインホールの舞台に立った、京都出身のバレエダンサー柄本弾。京都会館の舞台に立っていたバレエ少年は、国内有数のバレエ団・東京バレエ団のプリンシパル(最高位ダンサー)となって故郷へ錦を飾った。
京都市伏見区で生まれ育った三兄弟の末っ子。5歳のとき兄姉の影響でバレエを始め、本格的にプロを志したのは高校1年生の冬。コンクール受賞歴のある同世代の男子達と同じ舞台に立ち、レベルの差を実感したことがきっかけだった。18歳で同郷の先輩プリンシパル・高岸直樹(宇治市出身)に影響を受け東京バレエ団に入団。めきめきと頭角を現し、入団時に立てた目標「5年でソリスト、7年でプリンシパル」を2年も早く達成したが、その功績に甘えることなく「努力するのは当たり前。その姿をみてもらえていたのは運がよかった」といたって謙虚だ。
いまや古典のみならずベジャールやノイマイヤー、プティなど世界的振付家の作品をレパートリーに持ちながら、NHK Eテレ「旅するフランス語」出演などメディアでも活躍めざましい。直近では金森穣振付の世界初演作「かぐや姫」では物語を先導する主役の1人に挑みつつ、他の作品では団員の指導にも関わり、バレエ団を牽引する存在だと自認する。
「日本はバレエを習う人や教室の数は多いのに、鑑賞する人がまだまだ少ないと感じます。僕をきっかけにバレエを観る人を増やすことができれば、本番の数は増え、ダンサーの成長のチャンスも多くなる。それがバレエ界全体の発展にもつながるはず」。つねに上を目指すその姿勢は、「僕のことを待っていてくれたかのような温かさを感じる」というロームシアター京都の客席はもちろん、日本のバレエを志す若者たちに、少なからぬ影響を与えていくだろう。