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「ショールームダミーズ #4」第1期クリエーションレポート

あらたな「キャラクター」が胎動する

文:高嶋慈 編集:鈴木理映子
2019.11.15 UP

第1期クリエーションは、2019年6月19日~30日にかけての計11日間、ノースホールにて行なわれた。稽古初日からすでに、舞台空間の奥には、本作のキーワードの一つ「女性たちのマネキン」が十数体並べられ、異様な雰囲気を醸し出している。女性たちはしどけなく、あるいは脱力したように椅子にもたれかかったり、俯き加減の姿勢をとり、長い髪の毛で顔の表情は隠れ、皆一様に黒いキャミソールワンピースを制服のようにまとっている。記号化された女性性、オブジェクト=見られる商品としての女性身体、ユニフォーム的な匿名性や個性の剥奪、人形/生身の身体の境界、フェティシズム的な欲望など、本作の基底をなすテーマが読み取れる。

クリエーションは基本的に、①ウォーミングアップ→②共有された身体性をつくるためのワーク→③10分ほどのシーン構築、という流れで進められた。週の後半には作品の全体像がほぼでき上がり、通し稽古も何度か行なわれた。

『ショールームダミーズ』は2001年の初演から、#3までのバージョンが上演されており、本作#4も(唯一の男性ダンサーがいなくなり、全員女性ダンサーになった以外は)シーンの構成や振付に大きな変更点はないと思われる。また、オーディションの段階で、計6名の出演者それぞれに割り振るパートも決定済みだったのだろう。演出自体は大きく変更を加えることなく、短いシーンの構築が淡々と進んでいった。

興味深いのは、ある程度「配役」「設定」があり、フィジカルシアター的な側面があるのだが、それぞれの「キャラクター」についてはダンサー自身に考えさせていた点だ。全体像ができ上がった時点で、各自が自分の「キャラクター」について掘り下げるミーティングの時間が設けられた。2人1組で、相手の「キャラクター」について質問し合い、年齢、性格、どういう状態や感情か、相手との関係性などを言語化し、アイデンティティの明確化を図った。演劇的なつくり方だが、たとえば目線の合わせ方や細かい動きについては、その時々のテンションの中でダンサー自身から出てきたものに任せ、設定された枠組みの中での即興性を重視していた。「ゲーム、遊び心」「視線のかけひきを楽しんで」といった繰り返される指示の言葉にもそれは表われている。

また、初日から「ヒールの靴」「マスク」を着用させていたことも重要だ。これらは小道具としての重要性だけでなく、心理的にも作用する。女性性の象徴としてのヒールは、歩き方や身体の動かし方にも制限を加え、影響する。化粧を誇張したマスク、キャットウォークや股関節を意識して回すワーク、「見られている視線」を意識するようにとの指示。序盤では「グラマー」「官能的に」といった言葉が用いられたが、出演者たちが身体的に落とし込める共有の言葉を模索していく中で、「abandoned wave」という一見奇妙な言葉に発展した。「意識のコントロールを手放しつつ、仙骨を起点に波動のような動きが全身に広がる」状態を指す言葉だ。一見均質な集団の運動の中から個々の差異が浮上し、群れの中の多様性がカオティックに噴出する―KYOTO EXPERIMENT 2018で上演された『CROWD』とも共通する微粒子の撹拌のようなダイナミズムが、半年以上のブランクを経てどう舞台上に出現するか、来年の第2期クリエーションが楽しみだ。

  • 鈴木理映子
    鈴木理映子 Rieko Suzuki

    演劇ライター/編集者。演劇情報誌「シアターガイド」を経て2009年よりフリーランス。舞台芸術関連の原稿執筆、冊子、書籍の編集を手がける。成蹊大学文学部芸術文化行政コース非常勤講師。【共編著】『<現代演劇>のレッスン』(フィルムアート社)【監修】『日本の演劇 公演と劇評目録1980〜2018年』(日外アソシエーツ)、ACL現代演劇批評アーカイブ https://acl-ctca.net/ 

  • 高嶋 慈 Megumi Takashima

    美術・舞台芸術批評。京都市立芸術大学芸術資源研究センター研究員。「京都新聞」やwebマガジン「artscape」にてレビューを連載。共著に『不確かな変化の中で 村川拓也 2005-2020』(林立騎編、KANKARA Inc.、2020)、『身体感覚の旅──舞踊家レジーヌ・ショピノとパシフィックメルティングポット』(富田大介編、大阪大学出版会、2017)。

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