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#コラム・レポート#音楽#2020年度

京都市交響楽団×石橋義正パフォーマティブコンサート「火の鳥」

Director’s note : 石橋義正

文:石橋義正
2021.1.12 UP

各シーンの試みについて解説する。
 
【花火】 花園大学の男子新体操選手のダイナミックな跳躍を見せるために、通常の舞台とは違い、床全面にバネが付いた競技用のタンブリングバーンをアクティングエリアに敷き詰める。後に登場するダンサー達のパフォーマンスや舞台美術にとっては不安定な床となり、大きなハードルとなるが、一方で、これによって新体操選手の滞空時間が圧倒的に高くなり、優雅な演技が実現できる。  

【牧神の午後への前奏曲】 全国から募集したダンサー6 名が昨年6 月に決まり、夏から幾度もクリエイションを行ってきた。このシーンのテーマは「生殖」。将来、人は有性生殖をしなくなるという仮説を元に、牧神とニンフのそれぞれが分裂などの生殖行動を行う様を描く。大きな塊から分裂し、接合と分離を繰り返しながら個々に進化していくイメージ。身体の一部の様に伸び縮みする衣装と、藤井泉による、バレエを基本にしながらも生物的な動きを求めた独特な振り付け、加えてポジティブに共鳴し合うパワフルなダンサーたちとコントーショニスト茉莉花の競演によって、生命感あふれる有機的な関係が生まれた。  

【ボレロ】 出演はダンサーのアオイヤマダ。多様な表現力を持つ彼女が椅子に座っていながらもその存在感を発揮し、徳井義実と相まって絶妙なユーモアと艶を紡ぎ出す。更に視覚的効果として、安藤英由樹が開発した残像を視認するサッカードディスプレイの大型のものを、この舞台のために新規制作。空中に映像が映し出され、特殊な舞台空間を作り出す。

 【シェエラザード】 生命の起源をイメージする海洋生物のような巨大な造形は、「牧神の午後~」と同じく川上須賀代制作のパンデックス生地による衣装。鉄でできた骨組みに、円錐形に縫製した伸縮性の布を被せ、さらにその布を内側から外に押し出す様にして形作っていく。できるだけ歌手に負担をかけないように試行錯誤して制作しているが、それでも拘束される衣装でのパフォーマンスはソプラノ歌手 森谷真理のスケールの大きさによって実現できる。  

【火の鳥 1919 年版】 バレエ組曲のストーリーを解体し、「牧神の午後~」のシーンの続きとして構成。復活の象徴として火の鳥をとらえる。登場する火の鳥の卵のような塊は、吊り下げられた数千個のリボンで出来ていて、その形は「循環と再生」を表している。そして最後に、指揮の園田隆一郎と京都市交響楽団が主役となり、ショーを締めくくる。   名曲の素晴らしい演奏、それだけで十分に感動がある。今回はそこに人間の身体の可能性、さらにDVM(鈴木泰博の超低周波)のようなテクノロジーを加えることによって、演出効果を超え、今後の新しい芸術表現のあり方を問いたいと思った。自分は映像作家で、映像という遠隔なメディアを扱っている。コロナ禍では遠隔が加速化しているが、同時に人々はリアルな生の体験の重要性も感じている。将来、映像と現実の区別がつかない時代に入るに違いないが、その中でリアルな体験というものは、相当貴重になるだろう。その貴重な体験について、これからアウトプットを重ねるごとに、つねに検証していく必要がある。 「体感」はこれからの表現に、必ず大きな影響をもたらすはずだ。

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