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Noism×鼓童『鬼』記者会見レポート&井関佐和子(舞踊家・Noism副芸術監督)インタビュー

取材・文・インタビュー聞き手:高橋森彦(舞台評論家)
2022.6.1 UP

記者会見レポート|新潟から世界へ羽ばたくアーティストの初共演がついに実現!

転載元:埼玉アーツシアター通信第99号、 発行:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団(彩の国さいたま芸術劇場)

 

りゅーとぴあでの記者会見の様子。左から原田敬子、金森穣、石塚充
写真提供:Noism Company Niigata

 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館専属舞踊団Noism Company Niigata(Noism)と佐渡島に拠点を置く太鼓芸能集団 鼓童。新潟から世界へと羽ばたく両者が初共演を果たす。
 『鬼』が始動したのは2年前。Noism芸術監督の金森穣は、2004年の設立以来新潟をテーマにした作品を創ってこなかったことに気が付く。そこで以前から交流のあった鼓童とともにチャレンジする。音楽は作曲家の原田敬子に委嘱。金森と原田は2019年、富山県利賀村で上演した『still/speed/silence』の際に出会った。金森は原田から「芸術家として刺激を受けた」ため再度仕事することを熱望したと語る。

金森穣
写真提供:Noism Company Niigata

 原田は新潟に関するリサーチを行い、新潟には鬼にまつわる伝説が多いことを知る。“鬼”は「人間が作り出したもの」で「世界に通用するテーマ」であり、「鼓童さん自身の体の中が変容してしまうような挑戦ができたら」と作曲の経緯を話す。

原田敬子
写真提供:Noism Company Niigata

 鼓童パートの監修をする石塚充は「鼓童の歴史上最高難度と思うくらい難しい」と明かす。だがNoismとの稽古は充実しており、「全く新しい空間が今生まれているという実感があるので、早く皆様に見ていただきたい」と意気込む。

石塚充
写真提供:Noism Company Niigata

 鼓童の演奏者は7人。Noismの舞踊家は副芸術監督の井関佐和子ら14名。金森は「14本の腕を持った“鬼”が演奏し、14人の舞踊家が28本の手足でもって踊る」難しさを説きながら「何が“鬼”かというと、原田さんが一番“鬼”だと思います(笑)」と苦笑する。スリリングな舞台になりそうだ。

 Noism版のストラヴィンスキー作曲『結婚』(録音音源)も初演される。20世紀初めに一世を風靡した伝説のバレエ団バレエ・リュスを率いたセルゲイ・ディアギレフ生誕150周年を記念しての制作となる。金森は、ロシアの民謡詩に基づくバレエカンタータの構造を踏まえ独自の脚色をほどこす。フランスの作家ピエール・ローティの小説『お菊さん』に想を得たというが、詳しい内容は開幕までお預けとのこと。
 Noism×ストラヴィンスキーといえば、2021年の『春の祭典』が記憶に新しい。金森は「今回も一音一音、役柄ごとに舞踊家・担当が決まっており、膨大な量のカウントと振付を各舞踊家がこなし、それをアンサンブルで展開します」と構想を明かす。いかにストラヴィンスキーの音楽と対峙し、今の時代と共振する物語を立ち上げるのか刮目したい。


井関佐和子(舞踊家・Noism副芸術監督)インタビュー(聞き手:高橋森彦)

鼓童とのリハーサル。前列で座っているのが井関佐和子
写真提供:Noism Company Niigata

――同じ新潟を拠点とする太鼓芸能集団 鼓童との初共演が決まった際のお気持ちは?

「やっと来た!」という感じでした。お互いに意識していたものの、なかなかタイミングが合わなかったのですが、今で本当によかったです。(芸術監督の金森)穣さんは以前から新潟をテーマにした作品を創りたいとは言っていました。今回、原田敬子さんが”鬼”というテーマで作曲されましたが、新潟、佐渡の歴史を調べていくと『鬼』と一致する部分があります。

――原田さんの音楽に接して感じたことは?

リズム、カウント的なものが、あるようでないんですね。初めて聴いた時、これをどうやって作品にするのか、鼓童がどのように演奏するのか想像がつきませんでした。ただ、なぜか自分はここを踊りたいと思った場面があったんです。振付が進んでいく中で、その音で自分が踊れることになってよかったです(笑)。

――鼓童とのリハーサルからどのような刺激を受けていますか?

合わせるところが難しいですね。秒数は決まっていてもカウントはないんです。なので、どちらかに合わそうとすると違和感があって難しい。一番刺激的なのは、鼓童も私たちも動かない場面です。動かない間(ま)、真空状態で止まっている瞬間にゾクッとします。

写真提供:Noism Company Niigata

――同時上演のストラヴィンスキー作曲『結婚』の稽古に入られての印象は?

歌が入るので難しいです。声に合うように魅せないといけないのですが、カウント通りにやると違うように見えてしまう。おまけに凄い変拍子なので、皆で恐怖を味わっています。『結婚』も集中力がないと乗り越えられません。このダブルビルは”鬼”ですね。

――本番に向けての抱負をお聞かせください。

鼓童との合同練習では、初めてだと思えませんでした。舞踊家も演奏家も、誰一人違った方向に行っていないという感覚があります。なので、鼓童とNoismで、原田敬子さんという作曲家と金森穣という演出振付家が驚くくらいの場所にいきたいです。

――2021年1月の「ロームシアター京都開館5周年記念事業 シリーズ 舞台芸術としての伝統芸能 Vol.4雅楽 ~現代舞踊との出会い」でNoism0『残影の庭~Traces Garden』を上演したのに続くロームシアター京都での公演です。京都で踊ることへの思いを一言お願いします。

私は小学校高学年からバレエを学ぶため高知から京都に通い詰めていました。だから街にも親しみがあって、来るといつもホッとします。ロームシアター京都も大好きで、昨年、伶楽舎と共演させていただい時の滞在も良い感じで過ごせました。最近関西であまり公演ができず残念だったので本当にうれしいですね。皆様、ぜひお越しください。

  • 高橋森彦 Morihiko Takahashi

    2004年よりバレエ&ダンスを始めとする舞台芸術に関する公演評、解説、紹介文、インタビュー記事を執筆。寄稿媒体は、一般紙、専門紙誌、クラシック音楽情報誌、広報紙誌、Web媒体、舞台公演や映画のプログラム&フライヤー、単行本、ムック、会報、年鑑ほか。これまでに、江口隆哉賞などの選考委員、埼玉全国舞踊コンクール、全日本高校・大学ダンスフェスティバル(神戸)ほかの審査員を歴任。第12回日本ダンス評論賞佳作受賞。

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