もの・人・空間の出会いをアップデートする
ロームシアター京都と京都芸術センターが協働して行う、U35創造支援プログラム“KIPPU” において、2021年に福井は新作『デスクトッ プ・シアター』を発表する。テーブル上を舞台に、俳優の指やものを用いて上演をおこなう。「ものを置く」、「人が集まる」という機能を基本とするテーブルを劇場のイメージに重ね、「人」と「もの」の新たな出会いを生み出す。
「スペースが限られた展示に参加する機会があって、そのとき、小さい頃に指を使って遊んでいたのを思い出して、だったら全部スケールダウンさせて、テーブルを舞台に、指を使って上演してみようと考えました」。
これまでも福井は、劇場備品の「箱馬」を一定期間劇場外で保管し、それを再び劇場に戻すプロセスを記述する作品や、出演者や観客が各々の自室にあるものを持ち寄り、それらを舞台に再配置する作品など、「もの」「人」「空間」の関係性を問い直すアプローチを重ねている。
「学生の頃から、もの派の作家には影響を受けています。関根伸夫さんの《位相-大地》は、堀られた穴と積まれた土が、作品というか、ただ作家の行為の痕跡としてその場にあって、戻せば、また元通りになる。現実にすでにあるものに対して行為を介在させる、その手触りがいいなと思いました」。
今までは「身軽さに憧れがあった」と語り、 予算的なこともあって、先に自分がしっかりと枠組みを作ってしまうことで、いかにインスタントな方法論を作り出せるかを試行した。ただ、 松田正隆の『シーサイドタウン』で演出助手を務め、俳優に対する意識が変わったと言う。 松田は創作期間中のことを俳優と共に「劇場に住む」期間と例え、稽古を繰り返した。「松田さんは俳優のことをすごく信頼しているから、 俳優の応答を気長に待っている。自分はそれ まで枠組みを作ることを優先して俳優と向き 合う時間を少なくしてきたけれど、これからは 俳優との関わり方も変わるかもしれません」。
2021年夏、次は福井がロームシアター京都の住人になる。
初出:機関誌Assembly第7号(2021年3月25日発行)