TRANSVERSE ORIENTATION Dimitris Papaioannou ディミトリス・パパイオアヌー「トランスヴァース・オリエンテーション」

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

2022.7.28 [木]・7.29 [金] 19:00 開演
7.30 [土]・7.31 [日] 15:00 開演

ロームシアター京都 サウスホール

2022.8.10 [水] 19:00 開演
8.11 [木・祝] 14:00 開演

コンセプト・ヴィジュアル・演出 | ディミトリス・パパイオアヌー
音楽 | A. ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調 RV583 II Andante
初演 | 2021年6月2日(仏リヨン・ダンス・ビエンナーレ)
出演 | Damiano Ottavio Bigi, Šuka Horn, Jan Möllmer,
     Breanna O’Mara, Tina Papanikolaou, Łukasz Przytarski,
     Christos Strinopoulos, Michalis Theophanous

     With the support of Dance Reflections by Van Cleef & Arpels

コンセプト・ヴィジュアル・演出|ディミトリス・パパイオアヌー
音楽|A. ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調 RV583 II Andante
初演|2021年6月2日(仏リヨン・ダンス・ビエンナーレ)
出演|Damiano Ottavio Bigi, Šuka Horn, Jan Möllmer,
Breanna O’Mara, Tina Papanikolaou, Łukasz Przytarski,
Christos Strinopoulos, Michalis Theophanous

With the support of Dance Reflections by Van Cleef & Arpels

About

アテネオリンピック開閉会式の演出家が誘う
神話と現代が交差するライブ•ミュージアム

オリンピックの演出や近年ではピナ・バウシュ亡き後のヴッパタール舞踊団から初のゲスト振付家に指名されるなど、世界のアートシーンでその存在感を際立たせているディミトリス・パパイオアヌー。2019年の『THE GREAT TAMER』ではビジュアル•アートと身体表現を接続した唯一無二のスタイリッシュな舞台で日本の舞台芸術ファンに衝撃を与えました。約3年ぶりの来日となる今回は、最新作『TRANSVERSE ORIENTATION』を上演。点滅する光、影、雄牛(ミノタウロス)、男たち、女神や聖母を思わせる女(元ピナ•バウシュ ヴッパタール舞踊団のブレアンナ・オマラが演じる)…、パパイオアヌーのルーツである絵画やギリシャ神話を素材に身体のムーブメントが描く場面が次々と展開されます。コロナ禍で延期されたものの、2021年のリヨン•ダンス•ビエンナーレでの初演以来、世界各地で大きな反響を呼んでいる待望の新作にどうぞご期待ください。 ※Transverse Orientation : 蛾などの昆虫が、月などの遠方の光源に対して一定の角度を保ちながら飛ぶ感覚反応のこと。光源が近距離の人工の光となると、飛翔方向の角度が変化してしまう。

Trailer

Review

  • 「ディミトリス・パパイオアヌーは、相反することを両立させる矛盾の達人だ。彼は崇高な絵画を創り出し、不条理で瞬間を切り裂き、美と嫌悪、奇跡、喜劇を交差させる」

    The Guardian イギリス 2021年10月22日

  • 「Transverse Orientationは、パパイオアヌーがいかに優れた劇場の魔術師でありイマジストであるかを改めて示すものである」

    The Times ,イギリス2021年10月22日

  • 「パパイオアヌーの他の作品と同様に、この作品は綿密に創られ 、強烈な視覚体験をもたらす」

    The New York Times アメリカ 2021年6月8日

  • 「ボッティチェリの ヴィーナスを演じるブレアンナ・ オマラに見るピナ ・バウシュのレガシー」

    Corriere della Sera イタリア 2021年9月28日

  • 「ディミトリス・パパイオアヌーの新しい創造の衝撃波が、リヨン・ダンス・ビエンナーレ ・ フェスティバルを震撼させる 」

    franceinfo:culture,フランス 2021年6月3日

  • 「小石が完全に丸くなるには、たくさんの海が必要なのです」-ディミトリス ・ パパイオアヌー
    ディミトリス・パパイオアヌー と身体で描く芸術

    The Financial Times インタビュー より イギリス 2021年10月20日

  • 「Transverse Orientationは、忘れがたいイメージの数々を表現している。不条理、低俗と崇高の混淆、美と嫌悪が交差し、グロテスクな瞑想の世界へと没入する。パパイオアヌーの世界は、理性をはるかに超えた、新しい現実へと観る者を誘う」

    Aktuálně.cz , チェコ 2021年6月16日

Profile

©Julian Mommert

Dimitris Papaioannouディミトリス・パパイオアヌー

1964年アテネ生まれ。ギリシャの伝説的美術家ヤニス・ツァロウチスの元で学んだ後に、同国の代表的な美術学校アテネ美術学校で学ぶ。美術家として活動を始め、舞台芸術のアーティストとして知られるようになる前には、画家や漫画製作家として国際的に認められていた。NYでダンスを学んだのち、1986年にエダフォス・ダンス・シアターを設立。以後、フィジカル・シアター、実験的ダンス、パフォーマンス・アートを融合した独自の舞台創作を展開するきっかけとなる。2004年アテネ五輪の開閉会式の演出を手がけ、世界的に注目を集める。その後も、ギリシャ国立劇場の杮落しを飾った『NOWHERE』(09年)やパラス劇場『INSIDE』(11年)、『PRIMAL MATTER』(12年)、初の大規模な世界ツアーを行った『STILL LIFE』(14年)、アゼルバイジャン・ヨーロッパ競技大会の開会式『ORIGINS』(15年)のほか、2019年に日本初上陸となった『THE GREAT TAMER』(17年)などを発表。2018年5月にはヴッパタール舞踊団の委嘱により『SINCE SHE』を振付・演出。ピナ・バウシュ亡き後、初めて新作を発表した振付家として大きな話題を呼んだ。2020年9月、コロナ禍で自身が出演するデュオ作品『INK』を創作発表。2021年6月初演の最新作『TRANSVERSE ORIENTATION』は、2022年英国ローレンス・オリヴィエ賞の「最優秀新作ダンス作品」部門にノミネートされ、世界30か国以上で上演予定。

Column

  • ディミトリス・パパイオアヌー『TRANSVERSE ORIENTATION』

    ディミトリス・パパイオアヌー『TRANSVERSE ORIENTATION』

    文=乗越たかお(作家・ヤサぐれ舞踊評論家)
    2022.7.15

    Column

    ディミトリス・パパイオアヌー『TRANSVERSE ORIENTATION』

    文=乗越たかお(作家・ヤサぐれ舞踊評論家)
    2022.7.15

    パパイオアヌー。ちょっと発音しにくいこの名前こそ、いま世界の舞台芸術界でもっとも熱く語られるギリシャ人アーティストなのである。
     アテネ五輪の開閉会式の演出で世界の度肝を抜いた後も巨匠ぶることなく、今もみずみずしくド変態なパワー(良い意味で)を炸裂させ、超一級の美的衝撃に満ちた舞台を創り続けている。
     筆者も長く来日を熱望していたが、2019年6月の初来日公演『THE GREAT TAMER』(2017年初演)は日本の舞台芸術界を大きな衝撃をもって揺さぶった。
     続く今作の『TRANSVERSE ORIENTATION』はコロナ禍で中止と延期が続いたが、やっとこの夏に来日することになった。

    本稿ではその唯一無二の魅力について語っていきたいのだが、これがけっこう難しいのである。
     その表現世界が、あまりにも独自すぎるからだ。演劇というには台詞もなければストーリーもない。ダンスというには、音楽に合わせて踊ったり群舞があるわけでもない。ただ粛々と「とんでもない何か」が起こり続けるのである。

     『THE GREAT TAMER』を見た人は覚えているだろう。舞台上は全体が奥から手前に大きく坂のように傾斜していた。白い布をかけられて死体のように横たわる男。別の男が履こうとしていた革靴の底には、植物の根が強靱に張っていた。舞台上ではレンブラントの『テュルプ博士の解剖学講義』など数々の名画が再現されていくうち、いつしか天地創造から宇宙飛行士までが一本の線でつながってくるのである。
     こうした強烈なイメージは、まずダンサー達の身体を通して展開していく。ダンスの文脈で語られるのが多いのもそのためだろう。照明に逆光が多用されるのも、身体のラインを最優先に美しく見せるためだ。
     そして「身体を分断・分解・再構成するシーン」が随所にある。これはパパイオアヌー作品の象徴ともいえる。もちろん物理的に切断するわけではなく「身体の一部を隠し、見えている部分を組み合わせたり切り離したりする」という視覚トリックだが、その効果は絶大である。
     ピナ・バウシュ亡き後のヴッパタール舞踊団が初めて外部にフルレングスの作品を委嘱したのがパパイオアヌーだったのだが、その『SINCE SHE』(2018)でも長すぎる腕で歩く人や、浮遊する女性の生首、身体が左右半分ずつ結合している男女等々が出ており、分断と再構成のオンパレードだった。本作『TRANSVERSE ORIENTATION』でも二人のダンサーの上半身と下半身があり得ない角度で結合する様を見ることができる。また『Nowhere』(2009)という作品では20人ほどの人々が腕をつなげていって大きな翼のように動かすシーンも有名だ。
     人間の身体という、最も見慣れていたはずのものが全く違って見えてくることで、深く確実に感覚の錯乱が進行していくのである。
     今作は殺風景な舞台セットから始まるのだが、そこにも「おかしなヤツら」が登場する。
     小さなドアがひとつあるだけの地下倉庫のような灰色の壁。高所に蛍光灯が点滅している。と、「手が長く頭らしき部分が不自然なまでに小さくて全身のバランスがおかしい真っ黒い姿をしたヘンテコな連中」が続々と入ってくるのだ。しかも動きはどこかチョコマカしていて愛嬌がある。
     こうして不穏で、愛らしく、ときにゾッとするような瞬間が連鎖していく。それが単なるコケおどしではなく、パパイオアヌーならではの論理と美学に貫かれており、謎の説得力を生み出しているのである。

     美術のセンスもユニークだ。
     ヨーロッパの舞台芸術の真骨頂は「一見シンプルな舞台美術が途中でガラリと変わり、全く違う様相を見せる」ものだが、その真髄は毎回十分に発揮されている。『MEDEA』(1993)という作品では長テーブルと椅子が並ぶ室内に、人魚が登場して床は水で満たされるが、本作でもなかなかに驚かせる展開がある。
     今作で特に重要な役割を果たすのが、黒い牛である。
     実物大の大きさがあり数人がかりで操作するのだが、動きが見事で本物と見まごうほど。さらに牛のマスクを被った男も出てくる。
    「ギリシャ人に牛頭、とくればクレタ島のミノタウロス伝説かっ」と深読みしたくなるが、安易に物語をなぞるようなことはしない。どころか零れ落ちる乳がキリスト教のマリア像とかさなるなど、様々なイメージが幾重にも織りなされていくのである。そしてどうやって出現するかは公演を見てのお楽しみだが、トレイラー映像にあるように、クレタ島の夕景を思わせる印象的な情景までもが出現することになる。

     ギリシャは今日的な東洋や西洋という枠組みにとらわれない文化の源泉をもっている。パパイオアヌー自身も、アテネの芸術学校で舞台芸術に目覚め、NYにわたってダンスを学び、田中泯の舞踏ワークショップを受けたりするなど、特定の文化に縛られることのない発想が根底にある。
     その自由さは「成熟するにつれてある種の類型化が起こっているコンテンポラリー・ダンス界」においても歓迎すべき異物として認識されているのである。
     パパイオアヌーの舞台では、人間が抱く原初のイメージが、形も定まらぬままに掴み出され、舞台上に叩きつけられる。観客は頭で理解する以上の何かを、全身で受け取ることになるだろう。舞台芸術や美術が好きな人、ダンスや身体が好きな人、そして牛が好きな人も、ぜひともこの唯一の舞台を堪能して欲しい。

    作家・ヤサぐれ舞踊評論家
    乗越たかおTakao Norikoshi

    株式会社JAPAN DANCE PLUG代表。
    06年にNYジャパン・ソサエティの招聘で滞米研究。07年イタリア『ジャポネ・ダンツァ』の日本側ディレクター。
    19年スペインMASDANZA審査員。 現在は国内外の劇場・財団・フェスティバルのアドバイザー、審査員など活躍の場は広い。
    『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』(作品社)、『ダンス・バイブル』(河出書房新社)、『どうせダンスなんか観ないんだろ!? 激録コンテンポラリー・ダンス』(NTT出版)、『ダンシング・オールライフ〜中川三郎物語』(集英社)、『アリス〜ブロードウェイを魅了した天才ダンサー 川畑文子物語』(講談社)他著書多数。

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  • 人間を彫刻に変える魔術

    人間を彫刻に変える魔術

    文=小谷元彦(美術家・彫刻家)
    2022.6.15

    Column

    人間を彫刻に変える魔術

    文=小谷元彦(美術家・彫刻家)
    2022.6.15

    ディミトリス・パパイオアヌーの舞台を観劇しながら、これは〈彫刻〉ではないかと感じていた。彫刻という芸術に長い間携わってきた私の認識は確かだったのだろうか。
     古典的な意味での彫刻という芸術は、未来永劫に残すための素材を用いた創作物による時間旅行の術であった。ディミトリスが、インタビューで「時間を彫刻したい」と語っていたが、その意味はどういうことだったのだろうか。そもそも彫刻は時間と深い関係がある。膨大な制作時間がかかり、ある瞬間をポーズし、形に変えて未来へ残す芸術だが、舞台で彫刻するとは何であろうか。素材が石や木のような強固なものでなく、生身の人間となり、始まりと終わりがあるテンポラリーなものになるのだが、それでも私には(彫刻)の手応えを舞台から感じていた。
     本人が宗教的フォルムのクリアさに惹かれると話していた通り、舞台のパフォーマーの身体は、フォルムに無駄がなく、均整がとれたギリシャ彫刻のようでもあり、それを指針したルネサンスの彫刻のようでもある。ゆっくりとした動きで暗闇に浮かび上がる裸体は、古典絵画の様式美を思わせ、肉体感をより先鋭的に意識させる。調和を目指したルネサンスの芸術は、古典的な彫刻芸術が隆盛を極めた時期に当たる。しかしながらディミトリスは、古典的な調和をベースに扱いながらも、積極的にそのバランスを崩すことによって、人体を彫刻化していく。身体を分離したり、接合し、時には解体を伴い、奇妙な合体を行う。これにより身体は断片化され、不自然に結合された肉体へと変化していく。これは彫刻家のスタジオで人体彫刻を制作する時に身体の一部をバラしてみたり、違う身体を繋げてみたり、スムーズに、時には荒々しく連結させたりという作業と非常によく似ている。さらに言えば、ユーモラスな雌雄合体は、ミケランジェロやドナテルロなどのルネサンス彫刻に隠された倒錯のセクシャリティのコードの暗喩とも捉えられる。
     さらにパフォーマーの肉体をあえて不安定なポジションでバランスを取らせていることも彫刻化の術ではないだろうか。舞台上の身体は重力に拮抗したり、逆らったり、空気の抵抗を受ける演出がされている。これらは全て最小限の構造と力で支えられることによって、現実空間でバランスをとることが可能になり、浮力のトリックが発動し、視覚効果を与える。トラッドな彫刻では、質量を伴う物質が重力の縛りを受けるため、意図的に軽やかに見えるような演出をすることがあるが、それと似ている。しかも、この視覚効果は身体に限られたものでなく、舞台で扱われる素材選択にも及んでいる。シンプルな素材や形を効果的に扱うには、実はかなりの計算が必要である。舞台で行われている所作は何気なく見えたとしても、ディミトリスは自然に見えるまで、仕掛けに無駄なモノを削ぎ落としている。数多ある素材から、パフォーマーのアクションに対し、必要な厚み、色、重さ、動くものを的確に選び出している。この素材選択のクリアさは、彫刻という芸術の重要な側面である素材との格闘にもつながっている。

    目を開けて観ながら、
    永遠の眠りを送り出す葬送儀礼

     次は死の儀礼による彫刻化である。仰向けの裸身に白い布をかける、靴に根が張る、宇宙服を脱ぐ、解剖される、地面につき刺さる無数の矢など象徴的なシーンが表すのは死の儀礼であろう。さらにディミトリスは死を超現実主義的に扱っていることで、ミニマルな様相の舞台はカオティックに変化する。いつの間にか人が出現しては、いつの間にか消えていく。オブジェクトも次々と現れては、透明の闇へと消失していく。鑑賞者が目を離したり、違う場所に目を奪われているすきに、小さな混乱がどんどんと脳内に蓄積していく仕掛けを施されている。視認と短期記憶がうまく結びつかないままに。この輻ふくそう輳式の複雑さ、全体を捉えられない難解さは死が定義できないことの示唆なのだろうか。来たるべき死の直前に分泌される体内の液と似たものが出ているような高揚感を覚える。私にとって『THE GREAT TAMER』とは目を開けて観ながら、永遠の眠りを送り出す葬送儀礼。それは古来の彫刻が宗教芸術として、埋葬など死と深い関わりがあったことを想起させた。
     最後にもう一つ彫刻芸術と近しい感触がある。操られる人、操る人の関係の逆転と正転が挙げられる。思い出すのは、モビールを発明した彫刻家のアレクサンダー・カルダーである。活動の最初期はトランクに自作の小型彫刻を入れた移動型(モバイル型)サーカスだった。木や紙などチープな素材と針金で動く彫刻を作りだし、2時間程度の操演のショーを行っていた。そして、最後にたどり着いたのは、人の力でなく、自然の力を利用した空気の流れで自由に動くモビールである。彼の生涯をかけた彫刻観は、操る、操られる、その二項対立が打ち消しあっている。ディミトリスの舞台でも、パフォーマーは自然の力と抵抗を用いて、操演の両極の関係を自在に往復している。
     ここまで彫刻とディミトリスの舞台に相似関係があるのだから、私が直感的に彫刻だと感じたことは不思議ではないだろう。「時間を彫刻したい」という意味は、舞台での絶え間ない変化の時間が、生身の肉体を〈彫刻〉の身体へと変えていくことだった。ディミトリス・パパイオアヌーとは、生きた人間を彫像に変える現代の魔術師である。
     次作ではどんな魔術を使って彫像にするのだろうか、楽しみに待ちたい。

    転載元: 埼玉アーツシアター通信第90号
    発行:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団(彩の国さいたま芸術劇場)

    Photo by Takumi Nemoto

    美術家・彫刻家
    小谷元彦Motohiko Odani

    1972年、京都府生まれ。覚醒と催眠、人間と非人間など両義的なグレーゾーンを彫刻というメディウムを用いて探求している。主な国内での個展に「Tulpa -Hereis me」(ANOMALY 2019年)、「Terminal Moment- 琳派400年記念事業」(京都芸術センター、2014年)、「幽体の知覚」(森美術館、静岡県立美術館、高松市美術館、熊本市現代美術館、2009年〜2010
    年)など。2018年まで東京藝術大学先端芸術表現科准教授をつとめ、現在は東京藝術大学彫刻科准教授。

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  • ディミトリス・パパイオアヌー新作 TRANSVERSE ORIENTATION

    ディミトリス・パパイオアヌー新作 TRANSVERSE ORIENTATION

    取材・文=桂 真菜(舞踊・演劇評論家)
    2022.6.15

    Column

    ディミトリス・パパイオアヌー新作 TRANSVERSE ORIENTATION

    取材・文=桂 真菜(舞踊・演劇評論家)
    2022.6.15

    2021年春の来日公演で披露する最新作『TRANSVERSE ORIENTATION』(2021)について、アテネに住むパパイオアヌーに話を聞いた。白壁にモダンなソファとアゼルバイジャン絨毯の赤が映える居間で、彼は日本を懐かしむ。
     「2019年の『THE GREAT TAMER(初演2017年)』の公演が私にとって初の訪日でしたが、前世では日本人だったのでは、と思うほど惹かれました。私が魅了された日本の美質は、簡素で静かなたたずまいに秘められた力。その強靭さは私がニューヨークで駆出しの画家だった18歳の時に観た、田中泯の舞踏に通じます」
     パフォーマーとしても活躍するパパイオアヌーは、触発された事柄を表情豊かに語ってから、創作中の『TRANSVERSE ORIENTATION』の予告映像を見せてくれた。ダンサーたちが使うハシゴやバケツが、イタリアのアルテ・ポーヴェラ(貧しい芸術、60年代後半に起こった美術運動)の代表的アーティストとなった、ギリシャ出身のヤニス・クネリス(1936~2017年)のスタイルを彷彿させる。
     「たしかに、誰もが使い慣れたシンプルな物を活かす、クネリスの表現は気に入っています。私が生活雑貨とともに多用する素材は水。透明で形の定まらない液体は、舞台美術の可能性を伸ばします」

    人々の記憶に枯れない花を咲かす
    ギリシャ神話も創作イメージの源泉

     ステージに降り注ぐ本水は肉体や道具に触れた途端、飛び散って宙に不規則な線を引き、落ちては波紋を広げる。濡れた肌や髪が色と質感を変える様子を効果的に伝えるのは、無彩色の壁や床。繊細な照明が招く闇や陰影は、踊り手たちの均整のとれたシルエットを一段と鮮やかに印象づける。
     「私がデザインする装置や衣裳の色調が暗いのは、裸体の美を際立たすため。ダンサーそれぞれの皮膚やフォルムを、最大限に輝かせたいのです」
     5分ほどの映像には、多様な「牛」が登場。巨大な黒い牛に裸の男女が寄り添う場面は、オレンジのライトを浴びると、絵付けしたギリシャの伝統陶器を想わせた。いっぽう、長い角をはやす牛頭のオブジェをかぶったスーツ姿のダンサーは、ユーモラスに跳びはねる。頭部が金属のロボット風キャラクターも加わる舞台には、古代から未来に至る文化が重層していく。
     「牛は『TRANSVERSE ORIENTATION』の大切なモティーフです。旧石器時代のラスコー洞窟壁画にも描かれたように、牛は長い間、人類と関わってきました。ギリシャ神話ではクレタ島の迷宮に幽閉された人身牛頭の怪物ミノタウルスが、アテナイ王子テセウスに退治される。このエピソードに若者が旧世代を倒す、歴史を重ねられます。各人物が担う、文明の融合も導き入れたい。ただし、特定のキャラクターや物語の再現はしません。不特定多数の潜在意識に咲く記憶の花を摘んで、花束を作るように舞台を構成していくのです。この方法で牛たちが普遍性を増せば、幅広い観客の共感を得やすくなるのではないでしょうか」
     ピカソ作品に凶暴な面影を残すミノタウルスは、牛と人の混血だ。パパイオアヌーの異種融合への憧れは『THE GREAT TAMER』のオブジェにも漂う。例えば、底から植物の根が伸びる黒い革靴。体毛にも血管にも見える根は、禍々しいエネルギーを放つ。
     「根の生えた靴は、肉から精神への移行という発想に基づくものです。合体する異種といえば、最新作には男と女の性を併せ持つヘルマプロディトス的な存在が登場します!私の演出は男と女を区別して、ホモエロティシズムを謳歌しがちでしたが、今回は違う」
     伝令神ヘルメスと愛と美の女神アプロディテを両親とする少年ヘルマプロディトス。まばゆい美貌に魅せられたニンフが一体化を望み、彼は両性具有者と化したのだ。優雅なヘルマプロディトスの大理石像は、フィレンツェのウフィッツィ美術館などで人気を集める。果たして、パパイオアヌー演出における両性具有者は、どのように現れるのだろう。
     「現段階では未定です。開幕後も作品のありかたを反芻し、カットや修正を行い完成度を高めていきます」
     濃密なエロスもパパイオアヌー作品の特徴だが、とりわけ足の振付には愛着や欲望が匂いたつ。
     「私にとって足は人体で最も官能的な部位。地面に立つ役目を担う構造も好ましいですね。博物館の古典彫刻は、足が鑑賞者の顔の高さにくるように展示されているでしょう。しっかり鑑賞できるように」
     楽しそうな笑顔は、心血を注いだ最新作の初日や大規模ツアーの日程が定まらない、コロナ禍の苦境を感じさせない。
     「『TRANSVERSE ORIENTATION』を日本の皆さんにぜひ見てほしい。舞台の沈黙を恐れず、あらゆるシーンを演者と自然に分かち合う力をもつ、質の高い観客。そういう人たちの前で最新作を披露できるよう、心から願っています」

    転載元: 埼玉アーツシアター通信第91号
    発行:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団(彩の国さいたま芸術劇場)

    舞踊・演劇評論家
    桂 真菜Mana Katsura

    舞踊・演劇評論家として複数のメディアに寄稿。㈱マガジンハウスの編集者(雑誌ブルータス、書籍「アンのゆりかご、村岡花子評伝/村岡恵理著」「シェイクスピア名言集/中野春夫著」「現場者/大杉漣著」等)を経て現職。実験的な作品から古典まで、多彩なパフォーミングアーツを巡り、芸術と社会の関係を研究。90年代前半から海外の国際芸術祭を視察し、美術評論や書評も手掛ける。国際演劇評論家協会(AICT) 会員。早稲田大学演劇博物館招聘研究員。

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  • 振付家パパイオアヌーはギリシャ神話と自然界の威力を混交する
    ディミトリス・パパイオアヌー「TRANSVERSE ORIENTATION」関連コラム

    振付家パパイオアヌーはギリシャ神話と自然界の威力を混交する

    文:フィリップ・ノワゼット(ジャーナリスト) 翻訳:岡見さえ
    2022.4.1
  • ポストヒューマンの時代における倫理と美学
    ディミトリス・パパイオアヌー《TRANSVERSE ORIENTATION》公演評

    ポストヒューマンの時代における倫理と美学

    文:保坂健二朗(滋賀県立美術館ディレクター(館長))
    2022.11.1

Ticket

  • 埼玉公演
  • 京都公演

2022.7.28(木)19:00開演|7.29(金)19:00開演|7.30(土)15:00開演|7.31(日)15:00開演

[当日券情報]
当日券は開演1時間前より大ホール入口にて販売いたします。
(場合によっては、舞台上で見えないシーンがあるお席もしくは補助席でのご案内になります。予めご了承ください。)
詳細はこちら

全席指定
一般S席7,000円/A席5,000円 U-25* S席3,500円/A席2,000円
メンバーズ一般S席6,300円/A席4,500円
*U-25は公演時、25歳以下の方が対象です。入場時に身分証明書をご提示ください。
※未就学児入場不可
※就学児〜12歳以下は保護者同伴の上、ご来場ください。
※A席(サイドバルコニー・2階席の一部)は舞台の一部が見えない場合がございます。予めご了承ください。
※演出の都合により、開演時間に遅れたり途中退場されますと、ご予約席へのご案内ができません。ご了承ください。

[チケット取扱い]
■SAFチケットセンター
電話 0570-064-939(彩の国さいたま芸術劇場休館日を除く10:00〜19:00)
チケットオンライン https://ticket.aserv.jp/saf/

■窓口
・彩の国さいたま芸術劇場(休館日を除く10:00〜19:00)
・埼玉会館(休館日を除く10:00〜19:00)

■イープラス http://eplus.jp
■チケットぴあ http://t.pia.jp


[企画展]
『ディミトリス・パパイオアヌー舞台写真展』7/31(日)まで(1階ガレリア/入場無料)
詳細はこちら

[託児]
2歳以上の未就学児に対して託児のご予約を承ります(お子さま1人につき1,000円の負担金をいただきます)。公演1週間前までに㈱コマーム048-240-5000までお申込みください(受付時間/土・日・祝を除く9:00〜18:00)。
定員になり次第締め切らせていただきます。

[お問合せ]
SAFチケットセンター 0570-064-939

[ご来場にあたってのお願い]
ご来場前に、さいたま芸術劇場HPにて「財団主催公演 新型コロナウイルス感染症対策とご来場の皆さまへのお願い」を必ずご確認ください。

主催・企画・制作:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
共同製作:彩の国さいたま芸術劇場、ロームシアター京都 ほか
助成:Dance Reflections by Van Cleef & Arpels
文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)│独立行政法人日本芸術文化振興会
後援:駐日ギリシャ大使館

2022.8.10(水)19:00開演|8.11(木・祝)14:00開演
★11日(木・祝)は上演終了後に、ディミトリス・パパイオアヌーによるアフタートークを実施します。(日英通訳あり)

【チケット販売状況:8/3 18:00更新】
追加販売分を含む、全ての前売券が完売しました。なお、当日券は若干枚数販売予定です。詳しくはロームシアター京都WEBをご確認ください。

会場:ロームシアター京都 サウスホール

全席指定
1階席6,000 円/2階席5,000円/ユース(25歳以下)3,000円/18歳以下1,000円
※未就学児入場不可
※ユース(25歳以下)チケットは、公演当日に受付にて年齢が確認できる証明書(学生証、免許証等)をご提示ください。
※演出の都合上、開演後はご予約のお席に案内できない場合がございます。

[チケット取り扱い]
■オンラインチケット 24時間購入可 ※要事前登録(無料)
https://www.s2.e-get.jp/kyoto/pt/
■ロームシアター京都 チケットカウンター
TEL.075-746-3201 (窓口・電話とも10:00~19:00/年中無休 ※臨時休館日を除く)
■京都コンサートホール チケットカウンター TEL.075-711-3231
(窓口・電話とも10:00~17:00/第1・3月曜日休館 ※休日の場合は翌日)
■チケットぴあ http://t.pia.jp Pコード513-053
[託児(要事前予約)]
11日(木・祝) 公演では、託児サービスがご利用いただけます。詳細・お申込みはロームシアター京都WEBサイトにてご確認ください。

[お問合せ]
ロームシアター京都チケットカウンター Tel.075-746-3201

[ご来場にあたってのお願い]
ご来場前に、ロームシアター京都WEBサイトにて「ロームシアター京都主催事業公演実施時のご来場に際して」(新型コロナウイルス感染予防対策について)を必ずご確認ください。

主催:ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)、京都市
共同製作:ロームシアター京都、彩の国さいたま芸術劇場 ほか
助成:Dance Reflections by Van Cleef & Arpels
文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)│独立行政法人日本芸術文化振興会
後援:駐日ギリシャ大使館、京都新聞

  • 埼玉公演
  • 京都公演

Access

  • 埼玉公演

    彩の国さいたま芸術劇場

    〒338-8506 さいたま市中央区上峰3-15-1

    ■JR埼京線「与野本町駅」下車徒歩7分
    ■新大宮バイパス「上峰交差点」より200m
    ■JR埼京線池袋駅から快速約23分、新宿駅から快速約30分
    ■JR京浜東北線「北浦和」駅よりバス10分
    「彩の国さいたま芸術劇場入口」下車徒歩約4分

    ・駐車場(有料)は台数に限りがございますので、ご来場の際はなるべく公共交通機関をご利用ください。

  • 京都公演

    ロームシアター京都

    〒606-8342 京都市左京区岡崎最勝寺町13

    ■ 京都市営地下鉄東西線「東山」駅下車1番出口より徒歩約10分
    ■ 市バス32・46系統、京都岡崎ループ「岡崎公園ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車すぐ
    ■ 市バス5・86系統「岡崎公園 美術館・平安神宮前」下車徒歩約5分
    ■ 市バス31・201・202・203・206系統「東山二条・岡崎公園口」下車徒歩約5分

主催

  • 彩の国さいたま芸術劇場
  • ロームシアター京都

助成

  • ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル
  • 文化庁

後援

共同製作

  • 彩の国さいたま芸術劇場、ロームシアター京都

  • A production of

    ONASSIS STEGI

    Created to be premiered at ONASSIS STEGI (2021)

    Co-Produced by Festival d'Avignon, Biennale de la danse de Lyon 2021, Dance Umbrella / Sadler's Wells Theatre, Fondazione Campania dei Festival - Napoli Teatro Festival Italia, Grec Festival de Barcelona, Holland Festival – Amsterdam, Luminato (Toronto) / TO Live, New Vision Arts Festival (Hong Kong), Ruhrfestspiele Recklinghausen, Saitama Arts Theatre / ROHM Theatre Kyoto, Stanford Live / Stanford University, Teatro Municipal do Porto, Théâtre de la Ville - Paris / Théatre du Châtelet, UCLA’s Center for the Art of Performance

    With the support of Festival Aperto (Reggio Emilia), Festival de Otoño de la Comunidad de Madrid, HELLERAU – European Centre for the Arts, National Arts Centre (Ottawa), New Baltic Dance Festival, ONE DANCE WEEK Festival, P.P. Culture Enterprises Ltd, TANEC PRAHA International Dance Festival, Teatro della Pergola – Firenze, Torinodanza Festival / Teatro Stabile di Torino - Teatro Nazionale

    Funded by the Hellenic Ministry of Culture and Sports

    Dimitris Papaioannou’s work is supported by MEGARON – THE ATHENS CONCERT HALL

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