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#コラム・レポート#演劇#市民寄席#2021年度

【市民寄席】演目解説(第355-358回)

文:佐田吉(小佐田定雄)
2021.8.1 UP

1957年にスタートし、京都では恒例の落語会として長く親しまれてきた「市民寄席」。 京都会館がロームシアター京都としてリニューアルオープンしてから最初に開催された市民寄席は、第325回(2015年5月15日)の市民寄席です。第325回から今日まで、市民寄席は30回以上開催され、130以上の演目が上演されました。

市民寄席では、ご来場いただいたお客様に配布するパンフレットに、小佐田定雄氏による演目解説を掲載しています。Spin-Offでは、ロームシアター京都版・上方落語演目のミニ辞典として、また、これからも続く市民寄席の歩みのアーカイブとして、本解説を継続して掲載していきます。

 

第356回

日程:2021年7月27日(火)

番組・出演
「商売根問」桂慶治朗
「引き出物」(桂三枝作)桂三扇
「持参金」桂花団治
「軒付け」笑福亭松枝

◆ 商売根問 しょうばいねどい
 現在、我が国にどのくらいの数の職業があるかご存じでしょうか?一説によると一万七千種類を超すそうです。その中には絶滅危惧種になっている職業もあります。例えば落語では大活躍する「たいこ持ち」なども滅びる寸前でしたが、最近は少し増えたともうかがいました。上方落語家も終戦直後は絶滅しかけていましたが、現在は三百人近くまで増えてきています。

◆ 引き出物 ひきでもの
 平安時代に貴族が祝宴を開いた時、宴会に来てくれたお客様にプレゼントする馬を庭に引きだして披露したところから「引き出物」と言うようになったのだと申します。もっとも室町時代になると、かさばる馬よ
り貨幣のほうが便利なので「代馬」という名目でお金を渡すようになったそうです。明治時代になると結婚式の風習が世間一般にも広まるとともに、「引き出物」が一般家庭にも入ってくることになりました。昔はよく鰹節をもらった記憶があるのですが…。

◆持参金 じさんきん
 古典落語の舞台になっているのは古くて江戸時代、新しくても明治から昭和の初期です。江戸時代の噺の特徴は侍が出てくること。いまひとつは金額が「円」ではなく「両」や「分」、「朱」、「文」であること。「円」という貨幣の単位は明治四年から定められたもので、それまでの貨幣が小判が楕円形、「分」と「朱」は四角で、一文銭と四文銭だけが円形でした。明治四年以降は硬貨は全て円形になったので「円」という単位になったのだ…という説があります。一円が今の二万円ぐらいの価値があった明治時代のお噺です。

◆ 軒付け のきづけ
 上方落語には素人が「浄瑠璃」に凝る噺がいくつかございます。「浄瑠璃」と申しますと義太夫節、清元節、常磐津節、新内節など語り物の音曲全体を指すのですが、関西で「浄瑠璃」というと「義太夫節」ということになっています。義太夫節は「人形浄瑠璃文楽」で語られている音曲。ちょうど来月三日まで大阪日本橋の国立文楽劇場で「夏休み文楽特別公演」が上演中です。本日松枝さんが語る演目も上演されるかもしれませんので、ぜひとも聞き比べにお越しくださいませ。明治時代の大阪に実際あった風習を扱った一席です。

  • 小佐田定雄 Sadao Osada

    落語作家。1952年、大阪市生まれ。
    77年に桂枝雀に新作落語『幽霊の辻』を書いたのを手始めに、落語の新作や改作、滅んでいた噺の復活などを手がけた。つくった新作落語の数は250席を超えた。近年は落語だけでなく、狂言、文楽、歌舞伎の台本にも挑戦。著書に「5分で落語のよみきかせ」三部作(PHP研究所)、「落語大阪弁講座」(平凡社)、「枝雀らくごの舞台裏」、「米朝らくごの舞台裏」「上方らくごの舞台裏」(ちくま新書)などがある。2021年第42回松尾芸能賞優秀賞受賞。

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