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#インタビュー#2021年度

Artist Pickup Vol.15

寄田真見乃

インタビュー:長野夏織 文:松本花音
2021.12.1 UP

古の技術に現代の情感をのせる 若き天才尺八奏者

「首振り三年ころ八年」といわれるほど、良質な音を奏でることが難しいとされる尺八。リコーダーが好きな小学3年生の女の子は、はじめて尺八を吹いたその日に音を出して周囲の大人を驚かせたという。京都で生まれたその少女こそ、16歳で全国最年少の琴古流大師範を充許された尺八奏者・寄田真見乃だ。現在31歳にして「鶴の巣籠」や「鹿の遠音」に代表される古伝(こでん)尺八本曲で用いられる秘伝技法をものにし、大家たちから称賛を受ける現代尺八界のホープである。

尺八は7世紀末から8世紀初頭に中国から伝来した、真竹に5つの指孔がある単音楽器。穴のふさぎ方や顎の上げ下げなどで微細に音が変わる高難度さゆえ、時勢によって衰退したり技術が簡略化されて伝承されてきた面もあるという。だからこそ寄田はクラシカルな技法により尺八独自の世界を表現する古伝曲に魅了され、その技術の会得に夢中になった。古伝曲には特有の音の”陰陽”があり、それらを吹き分けることでも曲の顔つきが変わるという。「古伝には、日本各地の原風景や、その風土のなかで時代の趨勢(すうせい)を乗り越えてきた人間の生き様が映し出されています。私はそこに、現代を生きる人々の感情を重ね合わせて演奏したい。それは日本的なレッテルへの挑戦でもあります」。

尺八曲は演奏者自身が作曲を手掛けることも多く、寄田も作曲をおこなうが、演奏手法こそ異なれど現代楽曲と古伝楽曲への向き合い方は同じだという。その姿勢は多彩な活動歴からも明らかで、今年9月にはTHEATRE E9 KYOTOでのダンサー田中泯・ピアニスト森本ゆりとのコラボレーション公演、中国のRPGゲーム「原神」楽曲内の尺八パート吹奏、無観客ライブ配信コンサートなど、コロナ禍でも意欲的に活動を続けている。「次は能楽尺八の復元演奏をやってみたいです。あと、尺八の音をデジタルダウンロードできるよう素材化もしたい!」。現在の音楽をとりまく環境も見据えつつ、伝統邦楽の正統継承者としての使命も全うする勤勉さ・柔軟さ・大胆さが同居する姿に、今後ますます目が離せない。

  • 寄田真見乃 Mamino Yorita

    1990年9月、京都市生まれ。京都市在住。東京藝術大学音楽学部 邦楽科 尺八専攻卒業。小学校3年より都山流尺八竹琳軒大師範 三好芫山氏に師事。中学3年(15歳)で都山流師範に登第、日本初の最年少師範となる。15歳(高校1年)より谷口嘉信氏(琴古流洗心窟大師範)に師事。琴古流尺八・仏教尺八・禅尺八及び尺八学全般を学ぶ。ほか人間国宝 二代目 青木鈴慕氏、横山勝也氏、明暗流41世児島抱庵氏らの薫陶直伝を受け、各師から賞賛を受ける。異例の16歳(高校2年)で全国最年少の琴古流大師範を充許。2010年CDデビュー。NHK邦楽オーディション合格、青山音楽賞・新人賞受賞、令和元年度 京都市芸術新人賞受賞。

  • 長野夏織(ロームシアター京都) Kaori Nagano

    ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)事業課事業係長。事業企画では主に音楽事業を担当。昭和音楽大学アートマネジメントコース卒業後、ミューザ川崎シンフォニーホール(2004-13年)にて事業企画・広報を担当。2014年1月、開設準備室より現職。

  • 松本花音(ロームシアター京都)
    松本花音(ロームシアター京都) Kanon Matsumoto

    ロームシアター京都 広報・事業企画担当/Spin-Off・機関誌「ASSEMBLY」編集担当。横浜市出身。早稲田大学卒業後、株式会社リクルートメディアコミュニケーションズにて広告制作およびメディア設計に従事。舞台芸術業界に転向し、国際舞台芸術祭フェスティバル/トーキョー制作・広報チーフ(2011-13年)、パフォーミングアーツ制作会社勤務を経て2015年より現職。

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