映像でアート・社会・教育をつなぐ マルチプレイヤー
美術家・映像作家、映像ディレクター、大学教員という3足のわらじを履き、全国のアートプロジェクトや教育現場に複数の肩書で携わる山城大督。アーティストとして着実に評価を得つつ、芸術祭や文化施設での記録や配信業務も手がけ、現在は京都芸術大学アートプロデュース学科で教鞭をとる。ロームシアター京都では「京都・岡崎計画 搬入プロジェクト」でのドキュメント担当、2019年「プレイ!シアター」で上演型インスタレーション作品を発表。翌年オンライン開催された同企画では、5時間のマルチメディア生放送を実現した配信チームの技術統括を務め、劇場の可能性をひらく一翼を担った。
本人は、自らの働き方を「映像のいろんな使われ方を仕事にしている」と語る。映像との原点は小学生時代。西日本最大級のAV資料を所蔵していた大阪・茨木市立中央図書館で映画を何本も鑑賞していた。インターネット発展期の1998年に大阪市立工芸高校映像デザイン学科に進学し映像編集技術を習得したのち、国内随一のメディアアートの教育機関であるIAMAS(情報科学芸術大学院大学)に入学。同級生には真鍋大度(ライゾマティクス)らがおり、アートとプログラミングの領域を横断し、ファインアート業界での発表を作家活動とは限定しない、多様な技術を糧にしたアーティスト像が培われていった。
いま山城があらゆる場所で手がける多様なプロジェクトや作品に共通する要素は、〈今といつか〉〈こことどこか〉〈わたしと誰か〉といった、時間や空間をも超えうる存在どうしを結ぶ視点と技術である。それは映画でいうモンタージュ(視点の異なる複数のカットを組み合わせて用いる技法)を応用した手つきともいえる。
「アーティストとしての創作で自分の関心と社会を繋げ、映像ディレクターの仕事で映像と社会を繋げる。そして次世代に目を向ける教育を通して、人間の営みが時代を超えて見えてくる」。彼の“繋ぐ”ことへの欲望とモチベーションが生み出す表現は、〈距離〉についていま一度考えることを余儀なくされた私たちの未来を照らす手がかりになるかもしれない。
初出:機関誌Assembly第6号(2021年3月25日発行)