Column & Archivesコラム&アーカイヴ

#インタビュー#機関誌「ASSEMBLY」

Artist Pickup Vol.6

渡邉 尚

インタビュー・文=松本花音
2021.5.29 UP

振付/出演/音楽:渡邉尚『逆さの樹』©bozzo

身体ひとつで生き、変化を恐れないアーティストとして

「どこにいっても仲間はずれなんです」。白いビーンバッグ(お手玉)と床を駆使し、身体と物の関係性を起点に展開する独自のジャグリングで、ヨーロッパやアジアのサーカスフェスティバルに引っ張りだこの渡邉尚は、自らをそう評す。「ジャグリングが好きなんじゃなくて、身体が好きでやってる。僕のジャグリングは、僕の身体でないとできない」。ダンス/ジャグリング/サーカスの垣根を超える唯一無二の存在は、実はここ京都にルーツを持つ。
 左京区一乗寺で生まれ育ち、少年時代は夜な夜な四足歩行で近所を巡ったり屋根の上を飛び移っていたらしい。京都精華大学在学中の20歳の頃、友人が家族全員でジャグリングをしているのを見て、教えを請うようになる。もっと上手く見せるには身体の動きを学ばねばと、バレエやブレイクダンスにも傾倒し、20代後半には京都拠点のコンテンポラリーダンスカンパニー「モノクロームサーカス」の一員として活動。海外公演やワークショップの経験を積みながら、いつも「自分の身体で何ができるか」を自問自答していた。そんなシンプルな興味が、彼をあらゆる事柄から越境させてきた。
 「いまは足をどれだけ手のように動かせるかに興味があります。それがジャグリングにも、倒立にも、軟体芸にもなる。そんな感じで、つねに行動や考え方も変化させる」。本取材時は、“100日間予定なし実験”に取り組んでいる最中だった。仕事を断り、昨年移り住んだ沖縄北部の村で素潜りや探検、食料を収穫して暮らす。ジャグリングの起源は“暇”にあったのではと考え、自身をその状況に置いてみようと始めた試みだったが、技術の探求のみならず彼の人生観まで変えつつあるという。「表現と引き換えに貧しさを引き受けたり、助成金の結果に振り回されない、持続可能なアーティストの生き方の確立こそ、新たなアートを生み出すために必要だってわかったんです」。変化し続ける柔軟さは、対立や分断といった緊張状態が目立つ昨今のアート界に対する突破口になりうるかもしれない。

初出:機関誌Assembly第4号(2019年10月27日発行)

  • 渡邉 尚 Hisashi Watanabe

    京都出身。サーカスアーティスト。カンパニー「頭と口」主宰。2006年からジャグリング、倒立、軟体芸を始め、ダンサーを経て現在はサーカスアーティストとして世界のフェスティバルに多数出演。19年10月27日ロームシアター京都にて音楽家・中川裕貴とのコラボレーションをおこなう。健康法は「荷物を持たない、嫌なことをしない、お金で悩まない」。

  • 松本花音(ロームシアター京都) Kanon Matsumoto

    ロームシアター京都 広報・事業企画担当/Spin-Off・機関誌「ASSEMBLY」編集担当。横浜市出身。早稲田大学第二文学部卒業後、株式会社リクルートメディアコミュニケーションズにて広告のライティング、ディレクションやメディア・業務設計に従事。舞台芸術業界に転向し、国際舞台芸術祭フェスティバル/トーキョー制作・広報チーフ(2011-13年)、パフォーミングアーツ制作会社勤務を経て2015年より現職。

Turn your phone

スマートフォン・タブレットを
縦方向に戻してください