彫刻からダンスへ、身体をめぐる探求の旅
武蔵野美術大学で彫刻を専攻した敷地理は、交換留学先のベルリンで「身体」をメディアとして本格的に作品制作を始める。
金銭的な余裕もなく工房の設備も上手く使いきれない中、自分の身体そのものを素材に、彫刻をつくりはじめた。素材との対話を自分との対話にそのまま移し替えた」。
カナダの作曲家マリー・シェーファーによって提唱された「サウンドスケープ」、「音風景」と訳されるこの概念を捉えなおし、動きを採集することを「ムーヴメントスケープ」と名づけ、リサーチと実践を繰り返した。
「音だけでなく、ムーヴメントも含めて、空間と時間をまるごとサンプリングできないかと考えました。都市のある時空間を取り出して、それらを仮設して建築物のように観客を招き入れて見せる。このようなスタイルでつくった自分の作品をドキュメンタリー彫刻と呼んでいます」。
U35創造支援プログラム“KIPPU”で発表する作品では、都市のラストシーン、普段の生活で反復される最後の時間にフォーカスする。舞台芸術の特徴である時間軸があるということ、その時間軸が観客の体感で伸び縮みすることに面白さを感じているという。
「繰り返される日常の時間のことを考えたいと思っています。コロナ禍でこれまで以上に変化のない毎日が続き、鈍くなった時間を感じている人もいるかもしれない。自分たちがいまいるタイムゾーンを劇場でどう変化させられるかがひとつのテーマです」。
そして今春、敷地は京都に拠点を移す。「何に対しても身体がついてくる。この切り離せないものを確認したり、分からなくできるのがダンスの魅力。何に囲まれて、どんな速度で、何を避けてきたかなど、生活全体を包む壁紙のようなものを意識的に選ぶことを制作過程に含めて考えたいです。その中で出てくる自分にはコントロールしようとしてもできないことに興味があります」。
環境が変わり、生活が変わる敷地から次になにが生み出されるだろうか。
初出:機関誌Assembly第7号(2021年3月25日発行)