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#インタビュー#機関誌「ASSEMBLY」

Artist Pickup Vol.3

旭堂南龍

インタビュー:橋本裕介 文:松本花音
2021.5.29 UP

上方講談を「化け」させる龍

いま人気が再燃している伝統芸能と言えば講談。釈台と呼ばれる小さな机の前で、張り扇や拍子木で調子を取りながらリズミカルに語る話芸は、およそ600年の歴史を持つ。関西を拠点とする上方講談は、大正時代に隆盛を誇ったものの、いま現在残る屋号は「旭堂」「玉田」の二つのみ。上方講談協会、大阪講談協会、なみはや講談協会の3つの協会に所属する講談師は現在約40名程度という。その上方講談界で昨年27年ぶりの真打昇進を果たした講談師が、旭堂南青改め旭堂南龍である。
 大阪の東住吉高等学校芸能文化科出身で、大学時代は落語講談研究会に所属した。学生時代に観た3代目旭堂南陵や旭堂南左衛門らの、笑いから怪談まで演じる技芸の幅広さに衝撃を受けて講談の門を叩いた。弟子入り志願の翌日、その青雲の志でいずれは青龍そして南龍に化けるようにと、師匠から南青の名を授かった。
 入門後しばらくは通い弟子としての日々が続いた。ネタはつけるが芸は教えん、盗むもんや、の捨て育ちの世界。三食もままならない日々のなか、転機は2006年の天満天神繁昌亭オープンだった。落語会の前座として高座に上がり続けるうちにじわじわとその名を広め、新進気鋭の上方講談師として人気を集め今に至る。今年3月には、講談、浪曲、落語、能、茶道の若手が集う異色の団体「霜乃会そうのかい」を旗揚げし、自主公演を行ったばかり。これからの時代、大阪の古典芸能同士、横並びでやっていこうと南龍らの声がけで始まった。
 上方講談の魅力は「同じネタでも切り口が全員バラバラ。東京は型が硬派だけど、大阪は軟派。でも柔らかい部分でもしっかり芯が通っていて折れない。だから年齢を重ねるほどに味が出る」ところだという。「将来の弟子がちゃんと食べていけるようにするのが僕の役目。いいものをつくれば必ず人は認めてくれるから、絶対に大阪で売れたろって思ってます。東京には住みません(笑)」
 彼が、西の古典芸能の台風の目になるのは間違いなさそうだ。

 

初出:機関誌Assembly第3号(2019年3月31日発行)

  • 旭堂南龍 Nanryu Kyokudo

    講談師。1980年生まれ。大阪府立東住吉高等学校芸能文化科(4期)、近畿大学文芸学部卒業。2004年に旭堂南左衛門に弟子入り、南青となる。18年11月南青改め南龍襲名。現在、上方講談協会所属。19年8月6日、7日に大阪のHEP HALLにて霜乃会公演を控えている。健康法はシャンプーを使わず、お湯だけでずっとゆっくり洗うこと。

  • 橋本裕介 Yusuke Hashimoto

    1976年福岡生まれ。京都大学在学中の1997年より演劇活動を開始、2003年橋本制作事務所を設立後、京都芸術センター事業「演劇計画」など、現代演劇、コンテンポラリーダンスの企画・制作を手がける。2010年よりKYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭を企画、2019年までプログラムディレクターを務める。2013年から2019年まで舞台芸術制作者オープンネットワーク(ON-PAM)理事長。2014年1月〜2022年8月までロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)事業課担当課長兼管理課担当課長。

  • 松本花音 Kanon Matsumoto

    横浜市出身、京都市拠点。広報・PRプロデューサー、アートプロデューサー。
    早稲田大学第二文学部卒業後、株式会社リクルートメディアコミュニケーションズにて広告制作や業務設計に従事。2011-13年国際舞台芸術祭「フェスティバル/トーキョー」制作・広報チーフ、株式会社precogを経て2015-23年ロームシアター京都(公益財団法人京都市音楽芸術文化振興財団)所属。劇場の広報統括と事業企画担当として劇場・公共空間やメディアを活かす企画のプロデュース・運営統括を多数手がけた。主な企画に「プレイ!シアター in Summer」(2017-22年)、空間現代×三重野龍「ZOU」、岩瀬諒子「石ころの庭」、VOUとの共同企画「GOU/郷」、「Sound Around 003」(日野浩志郎、古舘健ほか)、WEBマガジン「Spin-Off」など。
    2024年よりブランディング支援、PRコンサルティング等を行う株式会社マガザン所属・SHUTL広報担当。舞台芸術制作者コレクティブ一般社団法人ベンチメンバー。
    Instagram @kanon_works

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