京都音楽文化を牽引する開拓者
昭和50年からつづく、将来の文化芸術における功績が期待される個人・団体を表彰する京都市芸術新人賞。その令和最初の受賞者のひとりとして選出されたのが、ヴァイオリン奏者の石上真由子だ。
京都生まれ京都育ちの石上は、5歳からヴァイオリンをはじめ、さまざまな音楽コンクールでの受賞、国内外のオーケストラとの共演など、その活躍はめざましい。現在はソロでの活動のほか、長岡京室内アンサンブル、アンサンブル九条山のメンバーとしても活躍しているが、近年得意とするレパートリーは中東欧との関係が深い。
「京都でデビューリサイタルのプログラムを考えているときに、ヤナーチェクのヴァイオリン・ソナタを聴いて、ことばの抑揚さえも旋律に昇華した音楽に衝撃を受けたんです」
日本では、音楽はこのように聴くべきだという堅苦しさがある。大学卒業後に滞在していたフランスで、演奏家と聴衆と場所さえ揃えば、どこでもコンサートはできるのだと気付いたのだと言う。それから日本でも教会などさまざまな場所で演奏してきた。
そんな石上がいま、生まれ育った京都で音楽祭を開催しようと動きはじめている。まずはアーティスト、観客、企画者、主催者の全員がフラットに意見を言い合い、アイデアを出し合える関係性をつくりたいと、京都コンサートホールの第1期登録アーティストとして活動をはじめた。
「演奏家は舞台でつねにお客さんの反応を感じています。受け取ったニーズをホール側にフィードバックし企画について話ができる関係をつくっていきたいんです」
音楽祭のアイデアはすでに膨らんでいるそうだ。なにが石上を突き動かしているのだろう。「京都で活動していて、地元の音楽家が大事にされていないなと感じることがあります。能力のある音楽家がしっかり評価されて、京都を活動拠点にしたいと思えるような街にしたい。弾き手も、聴き手も、つくり手もまだまだ成長できます。音楽へのマインドや環境を変えていきたい」
京都の音楽文化の未来は明るい。
初出:機関誌Assembly第5号(2020年3月25日発行)